先日、筆者はある上級幹部──ここでは仮にスティーブとしておこう──の支援を担当することになった。

 スティーブは、新しい肩書きを手に入れて以来、権力のひけらかし方が目に余ると上司から注意されていた。上司の見るところ、スティーブは会議の場においても、自分の言い分は常に正しいと巧妙に主張するようになっており、それで場の雰囲気が極めて息苦しくなってしまうというのだ。

 いったんスティーブが正しい答えなるものを主張し出すと、誰もアイデアを出そうとしなくなる。昇進してからの彼は、それまでと比べると協調的でなくなり、周囲の誰よりも頭のよい、偉い人になってしまった。要するに、彼は思いやりの心を失ってしまったのである。