松尾:その通りです。たとえば、上司が部下と面談を行う際には、上司が評価する部下の力量と、部下自身の意向をすり合わせながら、どのレベルの課題にチャレンジさせるのかを決定します。そして、チャレンジしたことへの振り返りでは、部下が考える成功や失敗の原因を聞き、それに対する感想を上司が述べることで、自分一人だけでは気づかない原因を発見させることができます。

 こうしたやり取りをスムーズに行うためには、あらかじめヒアリングシートや評価シートのようなフレームワークを用意しておくのが望ましいでしょう。オンラインによる面談であれば、こうしたフレームワークやツールがいろいろ用意されているので、対面よりも課題や振り返りの「言語化」「見える化」がしやすいメリットはあると思います。

「パフォーマンス向上」を目的とするプラットフォーム

西尾:ユームテクノロジーが提供するラーニングプラットフォームは、松尾先生がおっしゃったオンラインによる経験学習の支援にも役立つかもしれません。

 そもそも当社のラーニングプラットフォームは、オフライン、オンラインを問わず、集合研修、講義、個別学習など、あらゆる学習シーンや学習スタイルに対応する機能を備えています。なかでも特徴的なのは、eラーニングのような受け身の学習だけでなく、講師と社員、上司と部下、先輩と後輩といった参加者同士が、n対nで双方向にコミュニケーションを交わしながら学び合えるプラットフォームであることです(図表2を参照)。

 コミュニケーションの手段も、文字や音声、動画など、さまざまな形式が選べます。

 たとえば、営業教育の場合、新人が営業トークの練習を録画し、それを上司に見てもらってアドバイスを受けるといったこともできます。動画はオンラインでやり取りできるので、リモートワークでもまったく問題ありません。

松尾:自分の仕事経験を振り返る上で有効な手法だと思います。

西尾:さらに特徴的なのは、上司と部下の一対一だけでなく、ほかの社員も巻き込めば、異なる角度からのさまざまな評価やアドバイスが受けられます。

 営業トークであれば、同じ動画を見ながら「もっと表情を柔らかくしたほうがいい」とか、「『あのー』『そのー』が耳に障るので、意識してなくすべきだ」といったさまざまなアドバイスをAIが示すので、より多くの気づきを得ることができます。

松尾:他の社員も巻き込んでコミュニケーションを交わすというのは、多様なフィードバックが得られますし、学習効果も高いですね。

西尾:おかげさまで、当社のラーニングプラットフォームを研修や営業教育などに利用する企業は年々増え続けています。

 特に昨年から今年にかけては、コロナ禍によってオフラインの研修がほとんど開催できなくなったことから、オンラインでも使えるメリットが着目され、導入企業が約3000社から約1万社に急増しました。

 導入いただいた企業の多くは、教育の本来の目的である「人材のパフォーマンス向上」のために活用しておられますが、残念ながらそうした企業は、日本ではまだ少ないように感じています。「社員が成長したかどうか」という結果よりも、「教育を施したかどうか」というプロセスばかりを重視する傾向が目立つのです。

松尾:それは問題ですね。