「リ・インベンションリーダー」の重要性
──『デジタル変革と学習する組織』では、独自の組織論、マネジメント論が展開されています
デジタル化とひと口に言っても、既存業務を効率化する「足し算のデジタル」もあれば、新たな価値を創出する「掛け算のデジタル」もあります。効率化だけなら、これまで通りのマネジメントをきっちりやればいいのですが、デジタルを活用した価値創出、つまりイノベーションを起こすためには新しい仕組みが必要です。そこで本書では、既存の組織と切り離した探索型組織として「アジャイルビジネス組織」を立ち上げることを提案しています。
──アジャイルビジネス組織をけん引するリーダーを「リ・インベンションリーダー」と定義し、育成方法や、求められるケイパビリティについても詳しく解説されていますね
デジタル変革の肝は人財です。デジタルに特化したスペシャリストのノウハウを活用することも必要ですが、重要なのは、デジタルがビジネスのどこにどのようなインパクトを与えるかを理解することです。さらにデジタル変革を成功させるためには、メンバーのやる気を高め、経営層を説得できる「巻き込み力」の強いリーダーが不可欠です。私自身、頓挫した新規事業プロジェクトを振り返ると、ビジネスモデルや戦略より「人」に敗因があったケースが非常に多いのです。
──本書では「学習」も大きなテーマになっています
企業のデジタル変革の目指すところは「顧客に提供する価値の最大化」ですが、継続的に顧客への提供価値を向上させるためには、企業を「学習する組織へ進化させる」ことが必要です。激しい環境変化の中で「顧客の潜在的な課題」を見つけるためには、これまでの「思い込み」にとらわれることなく、データが示す事実に真摯に向き合い、仮説と試行を繰り返しながら、学び続けなければならないからです。本書では、PDCAに代わる新たなマネジメントサイクルとして「HYPER(仮説→計画→試行→見直し)」を提案しましたが、これも「学習能力」を組織に埋め込むための仕組みの一つです。

新しいマネジメントサイクル「HYPER」