デジタルがもたらすインパクトの全体像

──本書では、デジタル社会の全体像を見渡すうえで、「CCAC」という概念で整理されています。

 これは多種多様に広がるデジタル技術を、機能ごとに要素分解したものです。あらゆるデジタル技術は、現実の事象をデジタル化する変換技術(Convert)、人やモノや情報をつなぐ接続技術(Connect)、人間の思考や意思決定を代替する計算処理技術(Algorithm)、デジタルデータを人が分かりやすい形で提示する認識技術(Cognize)が組み合わさって社会にインパクトを与えています。例えば、スマートフォンは、カメラ・センサ・音声といったCovert技術、5GなどのConnect技術、UI/UXといったCognize技術を統合したデバイスであり、企業の顧客接点をユビキタス化し、顧客への価値提供方法や提供価値そのものを大きく変えています。自社のビジネスに当てはめれば、今デジタルがビジネスにどんなインパクトを与えており、今後どのような変化を引き起こし得るかを把握する見取り図になります。

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社会を拡張するデジタル技術の4機能「CCAC」

──個々のケーススタディを見ているだけでは分からない姿が見えてきますね

 ちょっと逆説的ですが、柔軟に変化するためにこそ、原理・原則をしっかり理解しなければいけないと思うのです。本書で最も強く意識したのもそこで、できるだけ「デジタルは経営にどんなインパクトを与えるか」について体系的に書こうとしました。

 原理を捉えモデリングすることが、未来の洞察(フォーサイト)につながります。そして、未来が洞察できれば、その未来像から逆算して現在を変えていける。デジタルが経営に与えるインパクトの全体像を理解しなければ、自社ビジネスの変革にどう生かすかを考えることはできません。