拡張していくデジタルエコノミーに企業が取るべき姿勢とは
──日本企業のDXの遅れが指摘されていますが、打開策はあるでしょうか

NTTデータ代表取締役副社長執行役員。公共・社会基盤分野担当、中国・APAC分野担当、ソーシャルデザイン担当。
1961年兵庫県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、同年日本電信電話公社入社。製造業、小売・流通・サービス業でのシステム開発、新規事業創出に従事し、特にコンサルティング、ERP、Eコマース、オムニチャネル、ペイメントの拡大に注力。近年は中国・APAC地域での事業拡大、デジタルソサイエティーの実現に向けた取り組みも推進。2018年6月より現職。著書に『デジタルエコノミーと経営の未来』(三品和広教授と共著(東洋経済新報社、2019年)、『信頼とデジタル』がある。(三品和広教授と共著(ダイヤモンド社、2020)
海外の先進事例をひも解き学ぶことは必要ですが、「遅れている」と焦っても意味がありません。
デジタル変革の目的は、あくまで顧客価値の最大化であり、デジタルエコノミーの3つのドライバーがもたらす変化の先端を突っ走ることではないのですから。顧客価値のリ・インベンションの実践に「遅過ぎる」ということはないですし、むしろリアルの強みと進展する技術を生かした戦略を考え、着実に実行していくことが必要なのではないでしょうか。
──社会の公器として、デジタル技術をビジョンの実現に生かすという視点が大事である、と
デジタルエコノミーの3つのドライバーは、これからも社会を大きく変えていくでしょう。かといって、無自覚にそれを突き詰めることは必ずしも善ではありません。企業も自社が顧客へ提供する価値だけではなく、社会における生活者の課題解決を価値に変えていくことが求められてくるでしょう。また、社会全体のデジタル化を考えていく上で重要なことは、既存の制度や法律を起点とするのではなく、デジタル技術が最大限効果を発揮できる制度や法律と、デジタルによって新たに発生する課題(データの信頼性<フェイクニュース>)、取得情報の偏り<エコーチェンバー>、プライバシー問題など)を解決する制度や法律を含めて社会実装を考えることです。
経営者は、既存事業で利益を出しながら、新しい経営改革を実行し、その結果に責任を持たなければいけません。そのためには、ある程度結果が見通せる具体論(現在の自社の強みと成功へ向けた因果の論理)を理解し、実行していく必要があります。
このような考え方に基づき、本書を執筆しました。読まれた多くの経営者の方から共感と期待のお言葉を頂いています。
経営者の方のお役に立てるように、デジタル変革の現場で起きていることを少しでも理論的に整理し、経営者としての経験に基づいた実践の観点から、引き続き検討を深めていきたいと思います。