多くの企業が、オペレーション型の組織からプロジェクトベースの組織への変換を進めている。大量のプロジェクトが同時に進行していく中でどのようにマネジメントし、成果につなげていけるか。また、うまくいかないプロジェクトの根幹にある問題は何なのだろうか。パーパスとして「マネジメントを、世界を動かすエンジンに。」を掲げ、プロジェクトマネジメント支援サービスを提供するマネジメントソリューションズのマネジメントコンサルティング事業部エグゼクティブディレクター、和田智之氏が解説する。

※本コンテンツは、2022年5月26日に開催されたダイヤモンド社ビジネスメディア局主催(企画:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部、協賛:マネジメントソリューションズ、ライズ・コンサルティング・グループ、アイシンク)、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー マネジメントフォーラム「DX・イノベーション創出を実現する プロジェクトマネジメントの実践」の協賛講演「大量プロジェクト時代のプロジェクトマネジメントと陥りがちな罠」の内容を採録したものです。

プロジェクトの成功率低下とメンバー疲弊を招く致命的な要因

 企業活動は、固定的組織による「オペレーション」と、一時的組織による「プロジェクト」に大別される。従事者の人員比率で見れば、オペレーション「98」に対しプロジェクトが「2」程度となる。1万人規模の会社であれば9800人がオペレーション、200人がプロジェクトに従事している計算となる(MSOL支援プロジェクト実績値)。

 日本企業の繁栄には、サービス提供・サポート・生産管理・物流・調達・営業・広報・総務・経理といったオペレーション業務が欠かせなかった。収益源の大部分もオペレーション部分で構成されていた。

 しかし、ニューノーマル、SDGs(持続可能な開発目標)、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、人口減少、Z世代、災害・疫病、地政学的リスクなど、これまでにない急激で広範囲な変化の発生により、あらゆる領域に関わる変革プロジェクト(例:デジタルビジネス構築、新規事業立ち上げ、新製品開発など)のニーズが頻出している。結果として、多くの企業で変革プロジェクトが乱立し「十分な工数が割けない」「一人が複数のプロジェクトを抱えている」「コンサルティングファームやベンダーに丸投げになっている」といった課題が顕在化。マネジメントの機能不全により、失敗が活かされず繰り返される状況に陥っていることもある。

 マネジメントソリューションズ(MSOL)で、マネジメントコンサルティング事業部エグゼクティブディレクターを務める和田智之氏は、変革の基本思想の違いの観点から、プロジェクト成功の足かせについて次のように指摘した。オペレーション組織が、efficient(効率的)を、資源(人的資源)を最小限にする「削る発想」でとらえる組織であるのに対し、プロジェクト組織は、effective(効果的)であることを、アウトカム(創造価値)を最大化する「増やす発想」でとらえる違いがある。

「人事面でも、efficientなオペレーション組織では、『ヒト』とは、働き手の塊(員数)です。固定組織に人が集まって教え合うため個性・能力・専門性はさほど重視されない。しかしeffectiveなプロジェクト組織では、『ヒト』とは可能性を持つ存在。さまざまな専門性を持った人材を組み合わせることになります」

 さらに、現代の日本企業には「3つの過剰」があるという。オーバーアナリシス(過剰な分析)、オーバープランニング(過剰な計画)、オーバーコンプライアンス(過剰な規制)だ。和田氏は「プロジェクトを始めるには、膨大な量のデータを集め、緻密な計画を立て、いろいろな社内ルールをクリアにしなければならない」と課題を共有し、そのうえで「効率偏重と3つの過剰が日本のプロジェクトの成功率低下とメンバー疲弊を招いています。デジタル時代の大変革期にそんなことをしていたら取り残されてしまいます」と警鐘を鳴らす。