統合EPMOモデルで求められる4つの機能

 和田氏は、あらためてPMOとEPMO設置における注意点についてこう説明する。そもそもPMOとは「プロジェクトの成功率を高めるために、プロジェクトに関わるリーダーを支援する組織」とし、プロジェクトにおける最大の戦力は「リーダー」であり、「リーダーをいかに効果的に働かせるかが最重要」だという。

「散見されるのは、経営層が口を出すことで、よけいな事務処理・報告・情報整理・調整などが発生し、リーダーの知的活動の時間を奪ってしまうことです。リーダーにとって『効率的』な活動を可能にするための環境やチームを提供(整備)するよう心がけましょう」

 一方、EPMOについて、和田氏は「変化の大きい環境下で、多数の変革プロジェクトの最適化と成果の最大化を行う経営層を支援する組織」と表現。具体的な支援活動は「戦略的優先度に従い必要十分なリソース(特に人)を割り当て、選択と集中により成功の見込みのあるプロジェクト立ち上げを支援」「リスクを冒してチャレンジするプロジェクトメンバーのモチベーションを高め、クリエイティビティを高める仕掛けを支援」「環境変化やプロジェクト状況に応じてプロジェクトの変更や新陳代謝を支援」することを挙げた。

「ここで大事なのは、経営者とプロジェクトの間で信頼関係を構築すること。信頼関係がないと、プロジェクトの成功率向上・全体最適化・メンバーの生産性向上・非常時の見直しなど、さまざまな支援が有効に機能しません」

 なお、EPMOには4つの機能(FCSLモデル)があるという(下図参照)。統合EPMOモデルでベースとなるのが「ファシリテーション」。経営層とプロジェクト間をつなぐ必須の基礎機能で、「けっしてモニタリングする監視者になってはならない」と和田氏はアドバイスする。2つ目が全体最適化の中心になる「コントロール」。3つ目は、日本の優良企業でも積極的に進められているという「サポート」。人に焦点を当て、モチベーションやクリエイティビティを確保する仕掛けを指す。最後の「リーダーシップ」は災害などに直面した際に重要になる機能であり、これにより「従来のポートフォリオを新しいものに差し替える」「短期間で混乱を回避する」といった緊急的な対策が可能となる。