これまでの不正防止策では
企業を守れない

 2008年の世界金融危機以降、大幅な規制改革が実施されたにもかかわらず、金融機関は依然として社内の不正行為や倫理的不祥事に悩まされている。

 そうした行為の結果、2020年までに金融機関が支払った罰金は4000億ドルに達した。ハーバード・ビジネス・スクールは2019年に、フォーチュン500からサンプルを抽出して調査を実施したが、それらの企業では平均で週2回以上、不祥事が発生していることが社内で裏付けられていた。

 リスクマネジメントの専門家らは、従来型の不正行為の防止策だけでは、もはや企業を守ることはできないとの認識を強めている。すなわち、公式の規則を設け、コンプライアンス部門の強化に投資して、組織やマネジャー、従業員をルールに従わせるという方法では、対処できないのである。近年、ニューヨーク連邦準備銀行などの規制当局に促されて、金融機関が行動の側面を取り入れた新たなリスクマネジメントの手法を採用し始めたのもそのためだ。