TSRはガバナンスや報酬の
不可欠な要素となっているが……

 TSR(株主総利回り)は、上場企業にとって最も権威ある業績評価指標となっている。役員報酬は、この20年間で、時間とともに権利が確定するストックオプション方式から、業績に連動して支払われる方式へと変化したため、TSRはガバナンスと報酬、ひいては企業経営のあり方にとって、欠くべからざる要素になっている。

「TSRは、価値創造をとらえる市場に基づく中立的な指標なので、経営者が会計操作でゆがめることは不可能だ」。こうした主張は正しいのだろうか。

 TSRは、売上高成長率や1株当たり利益といった過去を反映する指標とは異なり、株価をベースにしているので、経営判断の結果として将来何が起きるのかについての投資家の期待をとらえられる。これが最大の魅力である。