米国は先進国で唯一、国としての有給の育児休暇制度がないが、近年、わずかながらいくつかの州で有給の家族休暇政策が実施されている。この政策は企業業績にどのように影響するのか。新たな研究による綿密な調査からデータを紹介する。
研究者らは、1996~2019年の上場企業3426社と470万以上の事業所(工場、店舗など)のデータを収集した。まず、有給家族休暇法を可決した州の企業と、そうでない州の同様の企業を比較した。その結果、州法が成立した2年後から、その州に本社を置く企業は平均してROA(総資産利益率)で測定した業績が1%、労働者1人当たりの収益で測定した生産性が5%向上した。同法がない州の企業では向上しなかった。
有給家族休暇法は、長期的な株式リターンを高め、従業員の離職率も低下させた。その効果は、非上場企業よりも上場企業のほうが高く、女性の幹部や役員が比較的多い企業、出産年齢の女性が比較的多い企業、宗教心の薄い企業でより顕著に見られた。また、同法のある州に暮らす従業員の割合で調べても、企業にとって有益であることが示された。