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W・ベニス一19歳: 初めてリーダーとなる
私が初めてリーダーの地位に就いたのは、第二次世界大戦中のことである。まだ弱冠19歳で、歩兵隊の一少尉にすぎなかった私は、自分の任務を聞いて完全に度を失った。ベルギーの前線で小隊をいきなり指揮することになったのだから——。
私は任地に夜半過ぎに到着したため、兵士たちは被弾した家屋の残骸ですでに宿営し、就寝していた。小隊の運転手は私を台所に案内すると「長椅子で寝てください」と言った。しかし、私は床に寝袋を敷き、兵士たちと並んで横になった。といっても本当に眠ったわけではない。爆撃音を聞きながら、まんじりもせず夜を明かした。
当時、まったくの青二才だった私はリーダーシップの何たるかなど知るべくもなく、それどころか、この時初めて社会に出たのである。そのうち、兵士たちが起き出す気配がし、一人の軍曹が「あれはだれだい」と尋ねる声が聞こえた。尋ねられた相手は「新しい小隊長だ」と答え、その軍曹は「そりゃよかった。小隊長が来れば、ひと安心だ」と言ったものである。
その頃の私といえば、リーダーとしてその第一歩をどのように踏み出すべきかなど、まったく頭になかった。したがって、私が正しい行動を取ることができたのはまったくの偶然である。
そもそも私の登場の仕方は地味であった。私は使命感に燃えて、彼らの前に現れたわけではない。それどころか、床で狸寝入りを決め込んだのだ。 そういうわけで、私はこれから自分の部下になる人たちについて重要な情報を、彼らに変に意識させることなく知ることができた。彼らは私を——もしくはその後の私のように——自分たちの教えに応えてくれる人間を必要としていた。実際その後、私を育てたのはまさしく彼らであった。
ベルギーに赴任してからの数週間、私が生き残ることができたのは、戦場では先輩である部下たちのおかげである。彼らはリーダーシップの何たるかを、ほとんど身をもって教えてくれた。
私の赴任を喜んでくれた例の軍曹は、文字どおり、私の命綱になった。交戦地帯を通る時に吹き飛ばされないための技術など、戦場で生き残るすべを教えてくれたのである。たしかに、爆弾で吹き飛ばされることを心配しなければならないビジネス・リーダーはあまりいないだろうが、それ以外の点で私がベルギーで経験したことは、初めてリーダーになった者が直面する数多くの普遍的課題を含んでいた。
まず、私が指揮を執ることになったのは既存の組織である。人間関係はすでに出来上がっており、言わば血の通った組織である。
メンバーたちは新任の上司に具体的な要望を持っていた。とはいえ、当の私はといえば、彼らの要望が何なのか、よくわからなかった。その間、部下たちは私を観察していた。私が彼らの期待に応えるリーダーなのかどうか、お手並み拝見といったところであった。