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〈パワーポイント〉では人の心は動かない
説得はビジネス活動の中心である。消費者に商品やサービスを買ってもらうのも、社員や同僚に新しい戦略や組織を受け入れてもらうのも、投資家に自社の株式を購入してもらう、あるいは売らないでおいてもらうのも、提携先に新しいプランを合意してもらうのも、すべて相手を説得できるかどうかにかかっている。
しかし、説得がこのように重要であるにもかかわらず、大半の経営者は人の心を動かすどころか、自分の考えを伝えることにすら苦労している。
あまりにも多くの経営者が、〈パワーポイント〉のスライド、味も素っ気もない社内連絡メモ、広報部門が作成する誇張だらけの文書など、ビジネスライクに語るツールの類に振り回されている。最も慎重な調査と熟慮の末の試みすら、往々にして皮肉や無関心、真っ向からの拒絶に遭ってしまう。
人を説得するのは、なぜこれほど難しいのか。何が人を熱くさせるのか。このような問いへの答えを求めて、HBRのシニア・エディター、ブロンウィン・フライヤーは、脚本家の養成者であるロバート・マッキー氏をロサンゼルスの自宅に訪ねた。彼の名は世界に知られ、高く評価されている。
賞を受賞した作家、また監督でもある同氏は、ミシガン大学で映画芸術の博士号を取得した後、カリフォルニアに移住。南カリフォルニア大学の映画・テレビ学部で教鞭を執った後、みずからツーアートを設立した。ここでは、世界の作家や監督、プロデューサー、俳優、エンタテインメント会社の幹部たちを対象に、ストーリーテリングの真髄を教えている。
マッキー氏に学んだ脚本家や監督、プロデューサーたちは、『フォレスト・ガンプ』『エリン・ブロコビッチ』『カラーパープル』『ガンジー』『モンティ・パイソンと聖杯』『めぐり逢えたら』『トイ・ストーリー』『ニクソン』など、何百ものヒット作を世に出している。彼らが受けた賞は、18のアカデミー賞、109のエミー賞、19のウィッターズ・ギルド賞、16のディレクターズ・ギルド・オブ・アメリカ賞と、輝かしい限りである。
エミー賞を受賞したブライアン・コックス氏は、『蘭に魅せられた男』を脚色しようとする脚本家の人生を描いた2002年の作品『アダプテーション』のなかに、マッキー氏を登場させている。
マッキー氏はまた、ウォルト・ディズニーやピクサー・アニメーション・スタジオ、パラマウント映画など、映画やテレビ番組制作会社をはじめ、マイクロソフトなどの大手企業の制作コンサルタントも務める。これらの企業は、制作スタッフ全員を定期的にマッキー氏のセミナーに参加させている。