コミットメントの本質は正しく理解されていない

 偉大なリーダーをそう至らしめているものは何か。その答えは人それぞれだろう。

 多くが、優れた戦略的洞察力、つまり企業は、どこで、どのように競争すべきかを決定する知的能力であると考える。他方、それが計画の実行能力にあるとして、教育訓練を重視する人もいる。あるいは、何より組織を一致団結させ、社員たちを導く能力を備え、優れた直観の持ち主であると言う人もいる。

 いずれも正解である。ただしこれらの見解は、マネジャーの個人的資質が多様であることを示しているにすぎず、基本的なマネジメントの実践、すなわち優れたマネジャーはいかに戦略、実行、リーダーシップを編成するのか、その行動について語るものではない。真の経営執行者とはいかなるタイプなのかに注目する一方、いかにマネジメントしているかを見落としている。

 近年、有能なリーダーと無能なリーダーについて研究した結果、驚くべき結論に達した。個人的資質の違いにかかわらず、優れたマネジャーは例外なくコミットメントの醸成、維持、そして再度醸成する術に長けていた。

 コミットメントは、設備投資から採用や意見広告まで、さまざまな領域で求められるもので、いずれも企業に直接かつ永続的に影響を及ぼす。リーダーのコミットメントは、時間の経過のなかで、さまざまに組み合わさりながら、企業のアイデンティティを形成し、その長所や短所、チャンスと限界を明らかにし、組織を方向づける。

 しかし多くが、コミットメントが強力なものであることを忘れがちである。リーダーはつい眼前のごたごたに気を奪われるあまり、短期的には有効かもしれないが、組織と業務の未来に禍根を残すような行動を取ってしまう。

 市場や競争条件の変化と脅威をはっきり見極め、何らかの手を打たなければならない。そうとわかっていながらも効果的に対処できない。自分や前任者が張りめぐらせたコミットメントという「クモの巣」のせいで身動きできなくなってしまうのだ。