BCGは、どのような強みを持つ企業なのか

 1963年にブルース・ヘンダーソンによって米国で創設されたBCGは、競争優位性の構築に焦点を合わせた独自の戦略理論とともにグローバルに規模を拡大してきた。その世界第2の拠点として設立されたのが東京オフィスである。

「大規模な戦略プロジェクトの最後のステアリングコミッティー(運営委員会)で、パートナー以下全コンサルタントが揃ったときのことを、いまでも覚えています。当時私はインターンとして見学したのですが、彼らがその場で経営に関する重大な意思決定、合意形成を次々と行っていく様子を見て、圧倒されました。

 そして重大なアジェンダを正しく導いていくこうした人々のなかに、自分が身を置いたらどうなるのかと、強い好奇心が湧いたのです」

 そう語るのは、マネージング・ディレクター&パートナーの中澤佳寛氏だ。彼の前職は投資銀行。2008年のリーマン・ショックで資本市場がすべてストップする局面に立ち会った。そして「会社が苦しんでいても何もできない」自分に失望し、経営の根幹に関わりたいと奮起してMBAを取得した。その後のインターンでの経験でも、経営中枢の意思決定の現場を目の当たりにして、その卓越した経営センスに強い憧れを抱いたのだろう。

ボストン コンサルティング グループ
マネージング・ディレクター&パートナー
中澤佳寛 氏
国内の投資銀行を経て、ハーバード大学経営学修士(MBA)を取得した後、2014年にBCGに入社。あらゆる業界において、デジタル、イノベーション、およびビジネスを融合させた幅広い企業変革の支援を行っている。BCG保険グループ、金融グループ、テックアンドデジタルアドバンテッジグループ、およびマーケティング・営業・プライシンググループのコアメンバー。

 中澤氏はBCGに入社後、さまざまな経験を経て現在、保険、金融機関等の企業変革を支援している。ただ彼の仕事は、保険、金融という業界の枠にとらわれることはない。「そこがBCGの強みです。私たちは業界という枠にとらわれないクロスインダストリーでの働き方を実現しています。例えば保険においては、近年は通信会社が販売を手がけていますし、米国では自動車メーカーも商品開発を始めています。つまり顧客にディスラプティブな提案をするためには、異業種のことも研究できていないと経営レベルの価値提供ができない時代になっているのです。

 BCGには、すべてのセクターのプロフェッショナルがおり、業界独自の知見やノウハウを効率的に得ることができます。経営課題というものは、業界ごとに論点が違うので、専門的知見を求められる場面ではこうした体制が大きなアセットとなります。そうしてレバレッジをかけた提案ができるのが、私たちの強みです」

 他にもデジタル志向・利活用の進化、世界規模でのESGへの対応要請、グローバルでのインフレ・金利変動、企業のパーパス(存在意義)定義やカルチャー変革のプレッシャーなど、経営層を悩ますさまざまな変化が起きている現状において、課題解決にはクロスファンクショナルのアプローチが必要、と、中澤氏は語る。

「社内のインダストリー・ファンクションごとの専門グループを越えてプロジェクトごとに必要とされる専門性をもった人材を選抜してチームを結成するのがBCGの基本です。これを通じて、コーポレート戦略、人材・組織、オペレーション、営業・マーケティングなどをはじめ、最近ではデジタルやサステナビリティに関するテーマに取り組み、顧客への価値を最大化します。もちろんグローバル企業なので、メンバーは国内だけに限りません。

 実際にBCGでは北米、欧州、アジアなど、海外オフィスとの共同プロジェクトが非常に多いです。つまり国、業界、部門・部署の枠にとらわれない、通常では考えられないイノベーティブな提案が、BCGならできるのです」

 さらに、少数精鋭のチーム単位で経営課題に対する仮説の進化に取り組み、それを実施する上でレバレッジできる全社的な専門知識を蓄積することこそが社員の宝になっているのだと、彼は指摘する。

「私も保険・金融だけでなく、ヘルスケアや消費財ビジネスなども手がけたことがあります。グローバルの規模で、クロスインダストリー+クロスファンクションで経験が積める。それこそがBCGの最大の強みであり、他社では経験できないコンサルタントにとっての魅力だと考えています」