“セクターコンバージェンス”による知の掛け算で、社会課題を解く
波江野 今後5年先、10年先を見据えた時、エクサウィザーズの医療・ヘルスケア事業をこうしていきたいという展望を伺えますか。
羽間 一つはビジネスモデルの進化形として、「プラットフォーム×エコシステム」の形を目指したいと考えています。exaBaseをさらに発展させて、さまざまな業界のさまざまな業務領域に適用できるAIソリューションを増やしていき、もっと多くの企業・団体に活用していただけるようにします。
そうすることで、プラットフォーム上により多くのデータが蓄積され、AIがより進化して、課題解決の選択肢が広がります。ですから、多くの人たちが参加したいと思うエコシステムを形成して、プラットフォームをどんどん活用していただき、「プラットフォーム×エコシステム」のビジネスモデルを構築するのが、大きなチャレンジの一つです。
もう一つは、海外展開です。国や地域によって社会保障制度や医療システム、市場構造、医療・ヘルスケアに関する文化の違いなどがあり、日本のやり方がそのまま通用するとは考えていませんが、課題先進国である日本での取り組みを海外に広げていく社会的意義は大きいと思います。
幸いなことに当社のクライアントはすでに海外で事業展開している大手企業が多いので、クライアント企業との協働で海外展開を図る方法が考えられます。また、すでに実績と経験がある海外の現地企業とアライアンスを組んだり、M&A(合併・買収)したりする選択肢もあります。
エクサウィザーズの社員の国籍は20カ国以上に広がっていますし、外資系コンサルティングファームや大手IT企業の出身者、アカデミアの研究者、各業界や政府機関で事業の遂行や政策立案に携わってきたエキスパートなど、多彩なバックグラウンドを持つメンバーが集まっており、海外展開に向けたリソースは十分に整ってきました。
石山 グローバルで戦えるメンバーが揃ってきたので、一刻も早く海外に行ってほしいと羽間には言っています。ちなみに、羽間はCare & Med Tech事業部の中で年齢的に最も若い部類で、チームのメンバーから「若」と呼ばれています。サッカー選手と同じで、若いうちに海外に出て行ったほうが絶対に伸びると思います。
メンバーだけでなく、アセットも充実してきました。いまエクサウィザーズでは年間250くらいのプロジェクトを手がけています。プロジェクトが一つ終わるとソフトウェアやプロダクトなど何か一つの知的資産が生まれるとすると、250のアセットをかけ合わせたソリューションの選択肢が飛躍的に増え続けています。これはグローバルで戦ううえでも、大きな武器になります。
AIプラットフォームとAIプロダクトという事業セグメント間のシナジー、金融、製造業、消費財、ヘルスケア、エネルギーといった業界セクター間のシナジー創出を加速させることが、当社の成長戦略であり、日本と海外のシナジーも今後増やしていきたいと考えています。
特にヘルスケアやウェルビーイングの課題を解決するには、業界や国といった枠を超えて多様なプレーヤーがチームを組むことが欠かせませんので、Care & Med Tech事業にとってもはやセクターで区切る意味はなく、全業界がクライアントであり、社会課題解決のパートナーだといえます。
波江野 そうした業界の枠を超えたアプローチを我々は「セクターコンバージェンス」と呼んでおり、御社とまったく同じ課題意識で業界横断の知の融合、知の掛け算によるイノベーションの推進を支援しています。
おっしゃる通り、健康やヘルスケア領域で社会課題を解決するには、既存の枠を超えた新たな産業、ビジネスモデルを生み出していく必要があります。多様な知の化学反応で未到の領域を切り拓く活動を、我々もいっそう強化していきたいと思います。