リーダーシップ、患者・生活者中心、そして中長期視点
大川 ヘルスケア関連における富士通の今後の取り組みや事業構想についてお聞かせください。
堤 Fujitsu Uvanceの展開をいっそう強化していくのが会社全体としての方針であり、その中でヘルシーリビングの事業をよりスピーディに進めていきたいと考えています。私はよく「4倍速でいこう」と言っていますが、それくらいのスピード感で生活者一人ひとりにベネフィットを実感していただけるサービスを具現化していきたいですね。
富士通のヘルスケアソリューション事業は、これまでB2Bが中心でしたが、これからはB2C、つまり、生活者や患者さんをセントリック(中心)に考えた新しいサービスを生み出していく必要があります。たとえば、当社の強みである電子カルテシステムにPHR(パーソナルヘルスレコード)をつなげることで、一人ひとりの健康状態やヘルスケアニーズにマッチした、個別化されたサービスを提供していく。そういうことが私たちに求められていると思いますので、そのためのプラットフォームを構築して、日本全体の医療ネットワークをつなげるスタンダードモデルをつくり、それをグローバルに展開していきたいというのが、当社の考えです。
大川 そうしたスタンダードモデルの構築、言葉を換えればヘルスケアエコシステムを形成していくためのポイントは何でしょうか。
堤 3つほど挙げられると思います。まずは、強いリーダーシップです。これはエコシステムに参画する企業もそうですし、自治体や国も同じです。強いリーダーシップで方向性を定め、目標を共有し、必要な投資やリソース配分を決めていく。これができるかどうかで、大きな差が出てくると思います。
次に、生活者や患者をセントリックにした思想と仕組みにできるかどうか。サービス提供者である企業や自治体、医療機関の都合ではなく、受益者である生活者、患者を基点としたモデルでないと持続的に社会課題を解決できるものにはならず、SXにはつながらないと思います。
そして3つ目は、中長期的な視点に立てるかどうか。短期的な収益はもちろん大事なのですが、ヘルスケアやヘルシーリビングの課題解決は中長期の取り組みです。中長期の視点に立てないと、短期的な利害衝突が起こり、エコシステムを維持することができません。
大川 リーダーシップとペイシェント(患者)セントリック、そして中長期視点という3つのポイントは、私たちとしても非常に共感できます。
北原 最後に、ともにエコシステムを形成していくプレーヤーの皆さんへの期待とメッセージをお願いします。
堤 まず、私個人としてのデロイト トーマツ グループへの期待を申し上げれば、グローバルなスタンダードモデル、プラットフォームの構築に向けてともにアクションを起こしていただければと思います。プラットフォーム上で共有するデータの選定や共有の仕方を含めて、デロイト トーマツのグローバルな知見を活かして協働していただければ心強いです。
それからプレーヤーの皆さんとは、健康寿命の延伸という大きな目標を共有したうえでスクラムを組み、生活者セントリック、ペイシェントセントリックなサービスをスピーディに展開していきたいですね。そのためのルール形成にも一緒に汗をかきながら、社会課題の解決を通じて得られた利益はみんなでシェアできるような座組みを、ぜひ検討していきたいと思っています。それによって、エコシステムの持続可能性を高めることが、プレーヤー間で共有した大きな目標を達成することにつながるはずです。