ある巨大プロジェクトの奇跡

 1997年、スペインのビルバオ市にあるビルバオ・グッゲンハイム美術館が完成した時、批評家はこの傑作を20世紀の建築界の奇跡だとしてフランク・ゲーリーを絶賛した。市当局は、この美術館を見るためにビルバオを訪れる人は年間50万人に上るだろうと強気な予測をしたが、ふたを開けてみると最初の3年間だけで400万人が訪れた。都市計画や経済開発の世界では「ビルバオ効果」なる言葉も生まれた。近隣地区や都市、地域全体さえも変えてしまうほど華々しい建築物の影響力を指す言葉だ。

 しかし、あまり知られていない事実もある。ビルバオ・グッゲンハイム美術館は、この種の巨大プロジェクトでは過去にほとんど実現できたことのない、プロジェクト管理面の前例を打ち立てたのである。すなわち、6年以内に完成させるという当初の予定期間を守り、しかも1億ドルという当初の予算を300万ドル下回って完成したのだ。そして、世間の注目や観光客の誘致、経済開発効果の面では、出資者の期待を上回るどころか、彼らが夢にも思わなかったほどの効果をビルバオにもたらした。

 ビルバオ・グッゲンハイム美術館の完成から四半世紀になるが、この間フランク・ゲーリーは数々のプロジェクトにおいて、これと同程度の難しい要求水準を繰り返し達成、もしくはほぼ達成してきた。