「Bコープ認証」は日本でも増える

 BCおよびBコープ認証に関する動向調査などを担当する創発戦略センターのシニアマネジャー、橋爪麻紀子氏は「日本でも今後、同認証の取得を目指す企業が確実に増えるでしょう」と予測する。

 その理由は明白である。公益重視の経営、つまり、利他的な経営が持続可能な社会や自律協生社会の実現への方向性と一致するからだ。

「次世代経営システムのコンセプトは、従業員やコミュニティに多様性を求めるBIAと合致するところが多い。年々、大企業の関心も高まっています。本社の改革には時間がかかるため、まず、子会社をBコープ化することも考えられます。実際、多国籍企業のダノンやユニリーバなどは海外子会社の認証取得を促進しています。社会的意識が高いことを示し、組織のブランディングにつなげる狙いもあります」と橋爪氏は解説する。

 Bコープ認証は、日本企業に関しては2023年6月末現在、中堅・中小企業を中心に27社が認証を得ているという。

「世界では7000社以上が認証されていることから見ると、日本は少し遅れていますが、2024年中には現在の2倍程度になるといわれています。同認証の取得は、資金調達や人材採用・雇用維持などへの好影響が期待できます。実際、グローバルで見ると同認証企業への投資額は年々増加しています」(橋爪氏)

 2023年6月には、賞味期限が迫った商品などを買い取り、ネットで販売するクラダシが同認証企業としては日本で初めて上場(東証グロース市場)を果たして、資金調達に成功しているという。

 さらに、橋爪氏は「たとえば、イタリアではトリノやパルマのような地方自治体が利益の追求だけでなく、社会課題解決を目指す社会的企業を育成するため、Bコープ認証の評価の仕組みを使って企業研修を行っています。日本でもBコープ認証の認知度が高まっていくと、自律協生社会への企業の参画を促進する重要なパーツになる可能性もあります」と説明する。

リサーチ・コンサルティング部門
シニアマネジャー
高津輝章
TERUAKI KOZU
理事
山田英司
EIJI YAMADA
創発戦略センター
シニアマネジャー
橋爪麻紀子
MAKIKO HASHIZUME

 そこで、このほど日本総研では、みずから「次世代経営システムのあり方」を検討し、社内改革に着手する一方、「Bコープ認証」取得へのチャレンジも開始した。また、同社の未来社会価値研究所では「企業価値評価2・0」で財務以外の観点から企業を評価するメカニズムの議論を進めているという。

 いずれにせよ、高度経済成長期につくられた既存の経営システムでは、「課題先進国の日本」で成長を持続するのはもはや不可能。

 いまこそ、経済的価値と社会的価値をともに創造していくための改革を始める必要がありそうだ。 

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