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複数の評価指標を矛盾なく整合させる経営システム
評価結果こそ、手のなかに残ったものにほかならない。
どのような評価指標を導入するか、これがマネジャーや一般社員の行動を左右することは周知の事実である。また、ROIやEPS(1株当たり利益)といった伝統的な財務会計の指標は、激しい競争環境において必要とされる継続的改善やイノベーションを、誤った方向に導く可能性があることも同様である。
このような伝統的な財務指標は工業化時代には十分機能していたが、スキルや能力を習得していくべき時代にあっては有効とはいえない。
経営者や経営学者のなかには、既存の財務指標が不適切であるのを、より適切に改めるべきと考える人もいれば、「財務指標は無視すべきである。在庫回転率や欠品発生率のような業務指標が改善されれば、数字は後からついてくる」という声もある。
しかし、財務指標か業務指標か、どちらか一つを選んで、経営の舵を取るべきではない。
ただし、これまで数多くの企業を見てきた経験から言わせてもらえば、経営陣は、特定の指標だけに頼り、その他の指標を無視してしまうことはない。唯一の指標が、具体的な目標や事業の核心部分を表現できるはずがないと承知しているからだ。だからこそ、財務と業務の両面をバランスさせるような業績評価指標を求めている。
我々は12社を対象に業績評価に関する調査を1年間実施した。その調査の最中、「バランス・スコアカード」(以下BSC)と名づけた、トップ・マネジメントが事業を迅速かつ総合的な視点から見ることができる指標を考案するに至った。
このBSCは、戦略の最終成果を表す財務指標を含んでいるのみならず、これを補完すると同時に、将来の業績に影響を与える要因、たとえば顧客満足度、社内プロセス、継続的改善やイノベーションについて評価する、業務指標も含まれている。