ステークホルダー全体の価値拡大

 企業のリーダーが第一に果たすべき責任は、自社の長期的価値を高めることである。この点については、大半の人が問題なく同意することだろう。しかし、同意できるのはここまでで、ここから先は意見が分かれる。価値とは何か。それをどのように測定し、どう管理すべきか。

 企業価値を最大化するには、株主重視であるべきか、あるいは顧客重視か、従業員重視か、それとも別のステークホルダーを重視すべきなのか。すべてのステークホルダーが他のステークホルダーに影響を及ぼす複雑なシステム、たとえばエンゲージメントの高い従業員が顧客満足度を高め、その結果として利益成長が加速するようなシステムにおいて、無視してよいステークホルダーは存在するのだろうか。

 2019年のビジネスラウンドテーブルでは、181人のCEOが「企業の目的に関する声明」に署名した。その声明にもあるように、彼らを含めた大勢の著名CEOが「あらゆるステークホルダーのために」企業を運営していくことを誓っている。あらゆるステークホルダーとはつまり、顧客、従業員、サプライヤー、コミュニティ、株主である。