優れたプロジェクトマネジャーは、組織間の対立にどう対処しているか
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サマリー:経験の浅いプロジェクトマネジャーは、チーム内の対立を避けることこそ、プロジェクトを成功させる秘訣だと考えがちだ。しかし、本当に有効なプロジェクトマネジメントをしたいなら、対立を恐れず、それを適切に管理... もっと見るし解決することが重要になる。本稿では、優れたマネジャーが身に付けている5つのスキルを具体的に紹介する。 閉じる

プロジェクトマネジャーの役割は対立の回避ではない

 プロジェクトマネジャーになったばかりであれば、対立を最小限に抑えることが、チームがタスクを成し遂げ、期限を守り、いざこざを避ける秘訣だと思うかもしれない。そして、自分の役割は橋渡し役であり、対立するチームメートの間に平和をもたらす存在だと考えるのではないだろうか。これは理屈の上では正しいが、全員を満足させようとすると、有効なプロジェクトマネジメントができなくなってしまう。

 本当の秘訣は、対立する要求の間で避けられない衝突が起こるのを予想し、それを評価して、プロジェクトとビジネス全体にとって最適な方法で解決できるよう、環境を整えることである。偉大なプロジェクトマネジャーとは、ピースメーカー(平和をもたらす者)ではなく、鋭敏で、巧みで、尊敬されるコンフリクトマネジャー(衝突を管理する者)だ。優れたプロジェクトマネジャーになるには、次のようなスキルを身につける必要がある。

対立点とトレードオフを明らかにする

 プロジェクトには、考え方や優先順位、専門性の異なるステークホルダーが集まる。営業部門から来たメンバーは、新機能を満載にした製品をつくるプランを求め、エンジニアリング部門から来たメンバーはプラットフォームの安定にこだわり、業務部門のメンバーは合理的なオペレーションしか考えていないかもしれない。

 だからといって、誰かがチームプレーが下手だとか、プロジェクトが絶望的だというわけではない。こうした状態は、どのようなイニシアティブにも付いてまわる、多様で、しばしば相反する要求が存在することを意味するにすぎない。あなたがプロジェクトマネジャーとして目指すべきは、利用可能なリソースを踏まえて、あなたのリスク許容範囲内で、こうした要求を全員が理解し、最善の結果をもたらすルートを見つけられるように、安全で建設的な場を提供することだ。

 このようなトレードオフの会話を切り出す人がいないと、ステークホルダーは自分の世界に引きこもり、自分の職務上の見方しか気にかけず、プロジェクトに支障を生じさせることが多い。意思決定の権限が不明確な場合、誰も計画を承認しようとしない膠着状態に陥る可能性がある。あるいは、あるグループに大きな権限や影響力や決定権がある場合、他のステークホルダーに不都合な決定を押しつけるかもしれない。すると、それに反対するグループが、公然と抗議して計画立案をストップさせたり、そこまで積極的でなくても結束してその決定を骨抜きにしたり、後で崩壊するリスクが内在しているのに計画を推し進めたりするおそれがある。

 これらは、いずれも魅力的な選択肢ではない。話し合いに対立を持ち込むことは、そのプロセスを遅らせるリスクの高い手法に感じられるかもしれないが、実のところ、対立を避けようとするよりもはるかに安全で効率的だ。

建設的な対立のダイナミクスを確立する

 一番よいのは、新しいプロジェクトを立ち上げる時、チームメンバーの間に正しい対立精神を育むことだ。建設的な対立を可能にするためには、すべての関係者が競合する要求と、それを克服するために必要なトレードオフを理解する必要がある。

 ただし、ステークホルダーが自分の立場を明確に把握していたり、他者のニーズや要求に共感したりすると期待してはいけない。スマートな(具体的で、測定可能で、達成可能で、目標と関連性があり、期限がある)目標と、アカウンタビリティの厳しい要求に迫られて、誰もが自分の職務上の優先課題に集中している環境では、自己認識は不足し、共感は生まれにくい。偉大なプロジェクトマネジャーは、すべての関係者の視点に気づき、理解し、敬意を示すよう促す必要がある。