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声高に叫ばれるストック・オプション批判
2002年は、企業の破綻や不祥事が相次いで報道され、ストック・オプションによる経営者報酬に批判が集中した。理由は簡単である。リーディング・カンパニーと見なされていた企業が破綻し、株券が紙くずになろうとも、その経営幹部たちはストック・オプションによって巨額の収入にあずかっており、少しもその懐は傷んでいなかったからである。
ストック・オプションが企業幹部に儲けを保証する仕組みであるかに思えたためであり、彼らが厚かましくも、棚ぼたの利益を得たようにも見えた。そのからくりは、おおよそ次のようなものと見なされている。
まず、現行の会計規則ではストック・オプションを付与することを損益計算書に費用計上しなくてもよいため、ストック・オプションによって執行役員に高収入を与えても、それが事業報告書に反映されない。したがって、ストック・オプションの付与コストを計上しないということは、収益が過大に報告されていることになる。それが実態とかけ離れて株価の高騰を招き、企業幹部がストック・オプションによって高収入を得られる理由となっているのではないか、つまり会計規則の不備が原因であるという考え方だ。
このように考えると、財務諸表におけるストック・オプションの扱いは、株式市場が活況を呈しているのをいいことに、その陰で株主が受け取るべき金を、強欲かつ経営者失格の企業幹部の手に渡す仕組みとなっていたのではないかと思われてくる。
同時に、この問題を解決するのは至って簡単なことに思える。利益からストック・オプションにかかるコストを差し引いていないことが原因であれば、ほかの報奨制度と同じように扱えばよいはずだ。すなわち、当期収益から費用として差し引くのである。
ストック・オプションの価値を計算するのもそれほど難しいことではなく、ブラック=ショールズ・モデルという広く知られた方法がある。これを適用すれば、現在の株価、ストック・オプションの行使価格や行使期間、配当利回り、当該株式のボラティリティ(価格変動性)、金利水準といった比較的推計しやすいデータを用いて計算できる。
ストック・オプションを費用計上するというアイデアについては、すでに多数の著名企業や関係者が支持を表明している。ゼネラル・エレクトリックやコカ・コーラといった巨大企業が、確定したストック・オプション付与についてブラック=ショールズ法による推定金額を今後毎年費用計上すると発表しており、新興企業についてもアマゾン・ドットコムなどが同様の発表をしている。