家族に反対されても、キャリアの転換を成功させる方法
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サマリー:キャリアの転換を考える際、多くの人は保守的な選択をしてしまう。なぜならば、パートナーのようなあなたの選択に利害関係を持つ人は、キャリアの刷新に懸念を持つ可能性が高いからだ。本稿では、次に進むべきキャリ... もっと見るアの進路を独創的に考えられるようになるため、同時に実践すべき2つのアプローチを紹介する。 閉じる

キャリア転換の際、保守的な意見を集めていないか

「夫があなたの本を読まなければよかったのに、と思います」と、ある友人に以前言われたことがある。筆者の本とは、人々がどのようにしてキャリアの転換を遂げるのかをテーマにした『ハーバード流キャリア・チェンジ術』のことだ。

 友人の夫は企業幹部として成功していたが、キャリアの転換を検討していた。するとある時、勤務先から退職勧奨を受けた。退職手当はかなり手厚く、2年程度は起業のアイデアを模索して過ごせる金額が支払われた。たとえば、ワインビジネスを始めることは夫の長年の夢だった。

 2年間というと、たっぷり時間があるように思えるかもしれない。しかし、新しいキャリアが軌道に乗るまでには、事前の予想より多くの時間がかかるものだ。しかも、この人物は一家(学齢期の子どもが3人いた)で唯一の稼ぎ手だった。

 さらに問題だったのは、夫婦の間でリスクに対する姿勢が大きく違ったことだ。妻は、退職金のきちんとした使い方として銀行に預金する以外の選択肢はありえないと考えていた。いざという時のための保険として蓄えておくべきだというのだ。そして、退職後はただちに、生活費を稼ぐための新しい仕事を探し始めるべきだと主張した。

 一方、夫の考え方は違った。何十年も勤勉に働いてきた末に、ついにごほうびを与えられたと感じていたのだ。そのお金のおかげで、ようやくキャリアを刷新するために投資が可能になったと考えていた。夫婦間で難しい会話が続いた。

 誰しも、まったくの孤立状態で自分の働き方を刷新することは不可能だ。あなたの人生のパートナーは、あなたがキャリアに関して下す選択に利害関係を持っている。

 明示的な合意か、暗黙の合意かはともかく、あなたはこれまでさまざまな面でパートナーと交渉して合意をまとめてきた。あなたがどのような生き方をし、家庭や地域コミュニティでどのような役割を担うかについての合意だ。もしあなたがキャリアの刷新に乗り出せば、その合意をひっくり返す可能性が出てくる。あなたの最も身近な人たちが不安を抱いたとしても無理はない。パートナーは、キャリアの転換が2人の関係に及ぼす影響について強い懸念を持つ場合もあるだろう。

 キャリアの転換を目指そうと決意し、その移行のプロセスに乗り出した人たちは、自分自身の喪失感(元の職業人としての自己を捨てる以上、喪失感はついて回る)だけでなく、まわりの人たちの期待(周囲の人たちは、本人が以前のまま変わらなかったり、元の状態に戻ったりすることを望む場合が少なくない)にも対処しなくてはならないのだ。