PMIがうまくできない買い手企業は選ばれなくなる、そういう時代がすぐに到来する
設立以来、同社が手掛けてきたPMIのプロジェクトは累計で約150件に及ぶ。成功事例には、どのようなものがあるのだろうか。
佐古氏が印象に残っているのは、中堅の菓子メーカー同士のM&Aである。
同規模同士のM&Aだったが、2年間で赤字から営業利益1億円に成長した。買い手企業は、生産性は高いけれども看板商品がなく、売り手企業は、看板商品はあったが生産性が伴っていなかった。PMIが成功した理由は、その強みと弱みの掛け算がうまくいったためだ。
「このケースでは、入り口のところで両社が関係構築に真剣に取り組んだ結果、何でも話せる関係になりました。互いに尊敬し合える関係が構築できたのが、成功の秘訣だと思います。また、PMIの初期に“海外進出”というグループ経営方針を明確にしたのも大きかった。今ではM&Aを重ねてグループ売上げ100億円規模になり、海外展開も実現しています。我々のノウハウを活かしM&Aを軸に成長しているのは喜びですし、このような企業を増やすことが我々のミッションだと思っています」(佐古氏)
谷田部氏は、気に入られてリピートしてくれた顧客の事例を挙げる。
買い手企業は印刷会社で、同業他社をM&Aで獲得し、業態を拡大しようという思いがあった。同社にとって初めてのM&Aということもあり、谷田部氏はPMIの支援として、買い手企業の疑問や不安に対して、迅速かつ丁寧なフォローを実施。また、第三者目線での従業員インタビューを通じて、売り手企業の“組織相関図”の情報などをしっかりと伝達した。
「こうした支援を行うことで、買い手企業の疑問や不安を解消し、全体的な課題を網羅的に抽出しました。その後のPMIも順調に推移して、経営方針発表会も実施。結果として売り手企業の黒字化を1年で達成しました。同社はこの1社目のM&Aを皮切りに既に3社のM&Aを行い、私たちも継続的にPMIの支援をさせていただいています」(谷田部氏)

谷田部 華子氏
大手証券会社でのリテール営業を経て、2020年に日本PMIコンサルティングに入社。主に中堅・中小企業を中心に、業界業種を問わずさまざまなPMI支援に従事。M&A成約後の課題整理やビジョン策定、施策の実行支援等、幅広いサポートに関与。
PMIの仕事の醍醐味は、会社の岐路に立ち会い、M&Aの混乱期から成果を創出するまで、経営陣と一緒に経営方針を考えながら、企業結合の支援に携われることにある。
「私はかつて監査法人で、大手企業を担当していたのですが、当社の対象は主に中堅・中小企業。以前は会計面での関わりでしたが、ここでは経営方針を含めたビジネス全般の領域に関わります。時に泥臭い人間関係に直面しますが、その関係を解決する楽しみもあります。会社の成長に寄り添えるのがこの仕事の面白さです」と佐古氏は話す。
宮川氏はM&Aの近い未来について、次のような見通しを持っている。
「今後、M&Aは“成約”ではなく“成功する”ことが厳しく求められる時代になると考えています。同時に、売り手企業が買い手企業を選ぶ時代が、すぐそこまで来ていると感じています。いずれ、PMIが“うまくできない”買い手企業は選ばれなくなる。その足りないPMIの経験をどう補うかが、私たちの活躍する領域です。中堅・中小企業の存続を支え、日本経済を衰退させないという社会的意義を意識しながら、全国に“日本型PMI”を広めたい。海外も視野に入れつつ、会社の規模を拡大していきたいと考えています」
株式会社日本PMIコンサルティング
https://www.jpmic.co.jp/