反復プロセスを慎重に計画する

 情報交換は製品開発の活力源である。電子機器メーカーを例に取ると、回路の設計者は、ケーシングの設計者の開発状況がわかれば、ケーシングにピタッと収まる回路が設計できる。ケーシングの設計者は回路の設計者のニーズがわかれば、性能が上がった回路を装填しやすいケーシングを設計できる。こうした情報の流れは、実験的な試みとイノベーションを促進する。このため多くの企業は、製品開発プロセスにおけるフィードバックと反復プロセスを奨励するのである。この開発方法はコンカレント・エンジニアリングとして知られている。

 しかし、反復も度が過ぎると問題が出てくることがある。工程間で行ったり来たりが続くと時間がかかり、リソースが消耗させられるのは避けられない。また多くの場合、そのメリットがわずかであったり、悪くすると徒労に帰したりする可能性もある。

 我々がコンサルティングを行った通信会社を例に取ると、主な技術仕様2つを担当するチームの間では、定期的に20もの反復プロセスがあった。その結果、初期段階で仕様に気を配って作業する者はほとんどいないという状態に陥っていた。いずれは大幅な変更を伴う手戻りプロセスになるとだれもが知っていたからだ。

 ここから学ぶべきことは明らかである。反復プロセスは慎重に計画し、管理しなければならない。有効な反復は大いにやるべし。だが、無意味な反復は排除すべきである。そのためには、反復を必要とするプロセスを特定し、モデル化するのに役立つ視覚的な管理ツールが必要となる。

 残念ながら、一般に市販されている標準化されたプロジェクト管理ソフトには、このようなツールは含まれていない。最も普及しているツール──その代表的なものはPERT(program evaluation and review technique)とCPM(critical path method)ネットワーク図──は、作業フローを図示するものである。

 通常、このような図では作業は四角や丸で示され、作業の流れる順番は矢印で示される。複雑なプロジェクトになると、チャートは数十ページ、時には数百ページにわたることもある。各ページに判別可能な大きさで入れられる丸と矢印の数は限られている。

 たとえば、自動車のサスペンションの設計工程を四角と矢印で表すと、30ページ余りに及ぶ。もし、手戻りの心配がない連続作業でプロジェクトを完遂することができるなら、工程を分割して、使いやすいチャートを作成することができる。