サマリー：過去30年間にわたって、マクロの経済情勢は驚くほど安定していた。しかし、いまや新たな時代に突入している。それは不確実性の高い激動の時代である。多くのビジネスリーダーは、従来通りの戦略策定をしていてはこの... もっと見る時代のディスラプション（破壊的変化）に対応できないことを理解している。では、リーダーがこの不透明な情勢下で経営の舵を取り、持続的な成長を実現し続けるにはどうしたらよいだろうか。適切な戦略策定には、広い視野を持ち、予測、適応、そしてレジリエンスの能力を組み合わせることが肝要となる。本稿では、この3つの能力の重要性を解説したうえで、これらに企業リソースを最適に配分するためのガイダンスを提供する。 閉じる
新型コロナウイルス感染症によるパンデミック下で、一つの冷たく厳しい真実が露わになった。それは、企業の取締役会やリーダーシップが、戦略的な未来予測やオペレーションにおける柔軟性の優先度を低く設定していると、その企業を弱体化させる可能性があるということだ。
米国で新型コロナウイルス感染者が増え始めた時、多くの企業は不意の足止めを食らった。しかし、テキサス州を中心とする地方スーパーマーケットチェーンのH-E-Bは、その例外として際立っていた。
2020年1月半ば、同社は世界中に広がるサプライヤー網からの情報収集を始めた。また、中国の小売企業と連絡を取り、感染拡大初期における現地の状況を探り、そこから中国企業が得た経験や教訓を聞き出した。
YKKは経営哲学の力で持続的成長を実現する
ファスナーの世界トップブランドYKKは、新型コロナウイルス感染症によるアパレル市場の低迷で、初めてファスナー販売数量が100億本を突破した2018年度から一転、2020年度には77.9億本に減少するという危機に見舞われ... もっと見るた。しかし、同社の大谷裕明社長は、コロナ禍のような状況下でこそ持続的な成長のために、同社の「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」という経営哲学「善の巡環」に立ち返り、顧客の利益、社員の幸福、社会への貢献を重視する経営を行うと決断したという。本稿では、現在、グループにおいて72カ国・地域で事業を展開し、ファスナーをはじめとするファスニング事業で約3800億円の売上げを生み出す、海外生産比率9割超のグローバル企業であるYKKが、「善の巡環」をもとに目的意識を一つにし、海外を中心に持続的な成長を実現する戦略について大谷社長に話を聞く。 閉じる
