部下への教育的指導はなぜか悪循環に陥る

 部下へのフィードバック、とりわけ実績が期待値を下回った者への否定的な内容のフィードバックは、マネジャーの仕事のなかで最もやっかいな一つである。これほど憂鬱なものはないと感じている人も多いことだろう。

 話し合っているうちにだんだん不愉快になり、両者共に感情が高ぶり、頭に血が上る。当の部下は自己弁護に走り、ついには関係をこじらせてしまう。このような事態を避けようと、上司があらかじめ準備しても、やり方によっては真摯な話し合いが十分に果たせないまま、せっかくの面談の場を心ならずも無意味にしてしまう。

 これは意図的ではなく、無意識下の習性によるものであり、ストレスの副産物である。それゆえこれが、フィードバックの中身がうまく伝わらないまま終わってしまう一因でもある。

 本当はこのような面談をそれほど深刻に考える必要はない。思考を変えるだけで、それが否定的な内容のフィードバックでも、実りあるプロセスへと変える可能性は高まる。人間関係を損なうこともなく、しかも部下のパフォーマンスも向上する、生産性の高い対話へと改善可能なのだ。

 本稿では、このようなフィードバックの場がどのようにこじれるのか、またその理由について言及する。さらに実際どのような対話なのか、マネジャーが満足できる結果を得るにはどうすべきだったのかについても細かく考察してみたい。

 まずは、上司はフィードバックをどのように準備するのか、すなわち、面談に先立ち、その問題点についてどのようなフレームを描くのか、これを見ていくこととしよう。