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実務に追われ、スキル開発に時間を割けないリーダー
ケニアのサファリツアーで、筆者はライオンの一群が息をひそめてシマウマの群れをつけ回している様子を見ていた。1時間半近く経ったところで、身をかがめていた一匹の仔ライオンがふいに伸び上がった。すると、ゼブラの群れは散り散りになって逃げていった。雌ライオンはいたずら者の仔ライオンに向かってうなると、また前へと進んでいった。雌ライオンは、群れの生き残りが適合性(フィットネス)にかかっていることをよくわかっていた。適合性とはこの場合、状況の変化に対応してエサにありつく能力を指す。
これは戦略的適合性のメタファーに使えると、筆者は気づいた。リーダーの戦略的適合性とは、状況から学んで適応し、方向性を決定して競争優位を生み出す能力のことである。ライオンの群れが食べ物を得る機会の喪失に適応しなければならなかったように、ビジネスリーダーはビジネスを成長させ維持するために、変化する状況に適応しなければならない。
プロのアスリートは一般に、本番の競技よりも練習にほとんどの時間を費やしている。ビジネスのプロフェッショナルの場合はその逆だ。ほとんどのエグゼクティブはビジネスの実務にほぼすべての時間を費やし、成功の土台になるスキルを磨く練習をほとんどしていない。スキル開発を実践しないリーダーの戦略的適合性のレベルが低いのは、毎日、生き残りをかけた狩りでスキルを強化している野生の動物に比べて、動物園で飼育されている動物の身体能力が低いのと同じだ。
では、リーダーはどうすれば戦略的適合性を身につけ、維持できるのだろうか。この疑問に答えるため、筆者は最高幹部レベルのエグゼクティブ77人を4年間にわたって調査した。米国を拠点とし、テクノロジー、医療、金融サービス、消費者向けパッケージ商品、非営利団体など、さまざまな業界に属している上級エグゼクティブ一人ひとりに、戦略的適合性に関する80項目の質問調査を実施したところ、ベースラインとなる平均スコアは100点中60点で、かなりの改善の余地があることがわかった。その後、一対一の面接を毎月実施し、四半期ごとにエグゼクティブチームのミーティングでこのリーダーたちを観察した。高スコアのリーダーおよび長期的に向上したリーダーたちから得た所見をもとにして、筆者は戦略的適合性の高いリーダーが実践している4つの鍛錬方法を見つけ出した。
戦略の適合性:明確な戦略的方向性を設定し、必要に応じて修正する
戦略を策定する能力は、エグゼクティブの成功に不可欠である。マッキンゼー・アンド・カンパニーによる1500社を対象とした10年間の研究によると、戦略的方向性の設定は、組織の健全性を高めるのに何よりも重要な要素である。それにもかかわらず、ギャラップによる1000万人以上のマネジャーの過去30年間の調査によると、自分が属する組織のリーダーがビジネスの明確な方向性を設定していると強く思っている従業員は22%にすぎなかった。