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CEOはSCMのボトルネックか
ある日の午後、サプライチェーン担当役員が、CEOの部屋に向かって長い廊下を歩いている。その頭のなかでは、製販のグローバルな調整計画、あるいはそのためのプロセスが必要であると、どのように進言しようか、あれこれ考えをめぐらせていた。
世界規模のグローバル・サプライチェーンを構築するには、製販の協調が不可欠であること、またそれが大きな競争優位をもたらすことを、CEOにわかってもらわなければならない。
それほど難しい話ではない。想定問答も万全である。しかし、CEOの部屋の前に立った瞬間、ふと疑問が湧いた。「どうしてこっちから売り込みに行かなければならないのだろう。なぜCEOは何も聞いてこないのだろうか。製販調整を説明するよりもまず、臨機応変に行動することの必要性から話すべきだろうか」
このサプライチェーン担当役員の疑問も無理はない。CEOがサプライチェーンの重要性をきちんと理解していないことはよくあることなのだ。サプライチェーン担当役員にすれば、この種の無関心はほとんど理解しがたいものだった。ひょっとすると、彼は「自分は推進役として力不足なのだろうか」と思ったかもしれない。しかし、これが現実なのだ。
このサプライチェーン担当役員も承知しているが、言うまでもなく、CEOが留意すべき課題はいくつもあり、すべてに目配りし切れないこともある。しかし、オペレーション効率、運転資本の管理、最終的な業績を上げるうえで、サプライチェーンの卓越性(エクセレンシー)が決定的に重要な業界では、CEOみずからこの仕事に全力で当たらなければならない。業界によっては、サプライチェーンの質がそれほど問題にならないこともある。「でも、うちの業界は違う」と、このサプライチェーン担当役員は思っていた。
CEOと直接に話すことは、まさしく待ち望んでいた機会であり、気づきの瞬間が訪れるかもしれない。このビジネスチャンスについて言葉を尽くして説得しようと、サプライチェーン担当役員はCEOの部屋に入っていった。
我々の申し上げたいことも同じである。本稿の目的は、サプライチェーン戦略において、知らないうちにCEO自身がボトルネックにならないよう、注意を促すことである。サプライチェーン・マネジメント(SCM)では、決定的なポイントがなおざりにされると、SCMによって差別化を実現できる企業、特にメーカー、小売業、物流会社は大きなダメージを被る。したがって、CEOの出番が待たれるテーマである。
本稿では、サプライチェーンにおいてCEOが注力すべき7つの分野を紹介する。分野ごとに、参考にすべき実例もいくつか解説している。そのほとんどは、守秘義務を前提に、CEOやサプライチェーン担当役員から直接聞いたものである。