メンタリングが形骸化しつつある

 シアトルを本拠地にしている中堅コンサルティング会社、フリードマン・ミラー(仮称)は、この10年間で急成長を遂げたものの、ここに来て、ある問題に頭を悩ませている。

 アソシエートたちの離職がとどまるところを知らず、新規顧客の獲得どころか、既存顧客への対応にも追われる始末で、頭数の確保に四苦八苦しているのだ。ほんの5年前までは当たり前と思われていたロイヤルティと協調性の企業文化は、すっかり姿を消してしまった。

 若いアソシエートなどは、自分たちのことをフリー・エージェントか何かと思っているようで、好条件のオファーが舞い込めば、「待ってました」とばかりに転職していく。また、女性であれ男性であれ、ワーク・ライフ・バランスのために会社を去っていく者も少なくない。

 アソシエートたちは何かあれば、上司であるパートナーたちは部下の成長と能力開発に少しも時間を割いてくれないと、きまって口を尖らすようになり、かたやパートナーたちも、早晩辞めていくであろうアソシエートの教育にわざわざ労力を傾けることに納得がいかない。

 この問題は、フリードマン・ミラーに限ったことではない。この7年間、我々は30社以上のプロフェッショナル・サービス会社を徹底調査してきた。調査対象は、サービスをフルラインで揃えたグローバル企業から、社員数20人に満たないブティック系まで、多岐にわたっている。

 その結果、法律事務所、コンサルティング会社、監査法人、投資銀行、広告代理店、病院、資産運用会社、大学など、以前はあまり大きくなかった組織の多くは、急速に規模を拡大する一方、組織の複雑さが増し、いわゆる「大企業病」を患っていることが明らかになった。

 たとえば、プロフェッショナルと呼ばれる人たちが、自分のことを組織の歯車の一つにすぎないと考えるようになっている。やれ標準プロトコルだ、売上目標だ、ストレッチ・ゴールだと、さらにはコンプライアンス(法令遵守)と、山ほど降ってくる命令にパートナーたちは閉口し、窮屈になったと感じ、すっかりやる気を失っていく。

 あるパートナーの言葉を借りれば、「修業中のアソシエートたちの顔と名前が一致しなくなった時点で、一体化という風土づくりに努力するのは諦めた」というわけだ。こうした悪い風潮を払拭するには、どうすればよいのだろうか。