新たな知を紡ぐには、さまざまな情報を幅広く集めながら、背後にある文脈を理解し、適切な取捨選択を行わなければならない。そこから新しい概念をつくり出し、さらにそれを形にして実際に使えるかどうかを試してみることが重要だ。大東亜戦争において、日本軍のリーダーにはこうした一連の知の作法が欠落していた。

対する連合国軍のリーダーは、ありのままの現実に身を置きつつ見えない本質を直観し、新しいものをつくり出す「実践知」を備えていた。臨機応変に最適な判断や行為を行うことを可能にする、この能力を有するフロネティック(賢慮)・リーダーが連合国軍組織を成功に導いた。

「新たな知を希求する組織」という面では軍隊も企業も同じである。本稿では、日本軍の戦いから真珠湾攻撃、日独伊三国同盟樹立、ミッドウェー海戦、ガダルカナルの戦いなど、2つの成功例と4つの失敗例を取り上げ、リーダーの知的能力という観点から読み解き、企業におけるリーダーの参考となる教訓を探る。