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経営者への反感はますます高まっている
大企業の経営者ならば、大衆に好かれようなどとは思わないことだ。高額な報酬、頻繁なレイオフをはじめ、さらにはエンロン、ワールドコム、ヒューレット・パッカードなどの企業不祥事も記憶に新しい。企業経営者への反感はこれまでになく高まっている。
USローパーが2005年に実施した世論調査によれば、「実業界には、不正行為がはびこっている」と答えた回答者が72%に上っただけでなく、大企業の経営者が「とても信頼できる」と答えた人は2004年の3%からさらに下がり、わずか2%にとどまった。
ニューヨークにあるGFKローパー・コンサルティングのシニア・バイス・プレジデントのキャシー・シーハンによれば、このような傾向は「依然悪いまま」という。一方、企業は、社員、コミュニティ(自分の周囲の社会的組織)、自然環境により配慮すべきであるという圧力も高まっている。
「ビジネス・リーダーは、倫理観を高め、顧客や社員との関係を修復しなければなりません。その必要性がかつてないほど高まっています」。このように指摘するのは、ハワード・ガードナーだ。
ハーバード大学教育学大学院のジョン H. アンド・エリザベス A. ホッブズ記念教授を務めるガードナーは、認知心理学および教育心理学の権威である。倫理学を専門としているわけではないが、心理学者の一人として、道徳的あるいは倫理的な能力がどのように発達するのか、あるいは発達しないのかを明らかにすることが自分の使命であるという信念があった。したがって、道徳に関する諸問題について、きわめて広範に、かつ深く考えてきた。
ガードナーは、1983年に出版された独創的な著書Frames of Mind[注1]において、人間の知能は一つではなく、複数の知能から成り立っているという理論を提唱し、「言語的知能」「論理数学的知能」「空間的知能」「身体運動的知能」「音楽的知能」「対人的知能」「内省的知能」の7つを挙げた。
ガードナーはいまなお、この理論の精緻化に取り組んでいる。またこの理論は教育界で広く受け入れられ、世界各地の教師が、異なる知能に対する授業を組み立てようとしている。
ガードナーが道徳上の問題に関わるようになったのは、自分の理論が教育現場に取り入れられる様子に接してからである。「特定の人種や民族にはある種の知能が欠けている」と主張する学校や政策立案者が現れたため、この理論の提唱者として、自分の著作がこのように曲解されていることに反論すべきであると感じるようになったのである。