-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
「グラニュラリティ」は時代の要請である
2007年初頭、イラク駐留アメリカ軍司令官デイビッド・ペトラウス陸軍中将(2009年現在陸軍大将)はアメリカ上院軍事委員会の公聴会で、もしアメリカ軍がイラクから撤退した場合、宗派抗争がどれほど深刻化するかと問われた。ペトラウスは、見通しが不透明であることを認め、「現地で何が起きているか、その詳細を遠隔地から把握することは困難を極めます」と答弁している。
質問に立った上院議員たちは、全体像を知りたがっていたにすぎない。CEOならば、いつも答えを求められる質問である。とはいえ、当を得た全体像を提示するには、ペトラウスには「グラニュラリティ[注1]」、すなわちきわめて詳細かつ精緻な情報が必要だった。しかし、これを追求する時間的余裕のあるCEOはほとんどいない。
20世紀では、そのほとんどの間、CEOたちはこの難問に明確な答えを見出そうと、事業部制や地域別組織を導入し、それぞれにアカウンタビリティ(結果への説明責任)を負わせた。
しかしこの20年間、ITの進歩のおかげで、従来では考えられないくらいターゲット市場を細かくセグメンテーションし、市場モメンタム(成長性)、M&A、市場シェアの拡大といった成長源について、より正確に定量化できるようになった。
とはいえ、これまでのところ、情報の海から有益なものを見極め、そこから最も有望な成長機会を発見する方法を考え出した企業は稀である。また、自社が競争する市場の性質に応じて、きめ細かく組織化し、管理している企業はさらに少ない。
ひるがえせば、成長を加速し、過当競争から逃れられるポテンシャルは大きいといえる。顕微鏡で見るがごとく、市場、そしてライバルと比較した自社の業績を詳細に精査すれば、きわめて有望な成長戦略を展開できるだろう。