-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
事業撤退の負の影響を緩和できるか
不況が世界中で深刻化するなか、この嵐を乗り切るために、企業が強硬な手段に訴えるさまを、私は目の当たりにしてきた。あらゆるリーダーが、世代の違いに関係なく、これまで経験したことのない状況に陥っているというのが私の印象である。
多くの経営者が、これほどまで大規模の事業縮小や人員削減を迫られたことがない。そのため、みな同じ過ちを犯している。つまり、毅然と決断し、その実行を命令し、「前進あるのみ」と鼓舞しなければならないと、思い込んでいる。
このようなアプローチは、理にかなったものではない。株主価値を損なう可能性がある。私は35年以上にわたって、そのキャリアのほとんどを企業再生に費やしてきた。その経験から申し上げれば、リーダーは強硬路線だけでなく、柔和路線も用いなければ成功できない。
たしかに、リーダーには断固たる姿勢が欠かせない。事業の廃止や縮小という重大な決断を前に、怖気づくようではいけない。しかし同時に、リーダーは配慮を怠らず、思いやりを持って、社員や顧客、サプライヤー、地域社会に努めて対応しなければならない。
道徳的な問題はさておき、このような行動は理にかなったものである。既存事業から撤退する場合、その負の影響を過小評価する例があまりに多い。社員が職を失うに当たり、「人間性を否定された」「不公平である」、あるいは「ぞんざいに扱われた」と感じたとすれば、後に残った社員たちの生産性やロイヤリティも低下する。中途採用にも影響が及ぶだろう。
また、事業が廃止されることに怒った顧客やサプライヤーは、それ以外の取引も打ち切ったり、ライバルに乗り換えたりして、しっぺ返しするかもしれない。
このような負の影響を回避する方法はないのだろうか。完全とはいかなくとも、大幅に緩和する術があるのではないか。本稿では、リーダーがいかに負の影響を回避すればよいのかについて詳しく説明する。