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アフター・サービス市場の魅力
「サービス全盛の時代を迎え、企業が生き残り、さらなる繁栄を享受するには、サービス事業に軸足を移さなければならない」とは、よく耳にする主張である。
一部の経営者はこのようなサービス中心の考え方を唱えるが、その心には小さな引っ掛かりがあるはずだ。実は、大多数の企業がアフター・サービスを効果的に提供する術を知らない。あるいは、そもそも効果的に提供しようとの意欲すらない。世界中の経営者が、アフター・サービスを単なるおまけ程度にしか見ていないのだ。
しかし、アフター・サービスの可能性を軽んじていると、控えめに申し上げても、「軽率である」というそしりは免れない。1990年代初め以降、北アメリカ、西ヨーロッパ、そして日本の企業は、製品を熱心に売ることから、製品の利用価値を高めることに軸足を移した。
その背景には、需要の伸び悩み、競争の激化、利益率の低減といった事情がある。製品よりもソリューションの提供に力を入れ始めると、スペア部品の販売やアフター・サービスからも、潤沢な売上げや利益が期待できることがわかった。
アフター・サービスとは、具体的にいえば、製品の修理、更改、検査や定期的なメインテナンス、技術面でのサポートやコンサルティング、研修、さらには購入ローンの提供などを指す。
では、スペア部品の販売やアフター・サービスから、どれくらいの売上げや利益が得られるのだろうか。自動車、白物家電、産業財、ITなどの業界は、長年にわたっておびただしい数の製品を販売してきたため、アフター・サービス市場は製品市場の4ないしは5倍にまで膨らんでいる。
現時点では信頼に足る推定値が乏しいとはいえ、調査会社のアバディーン・グループによれば、アメリカではスペア部品とアフター・サービスの売上高は、GDP(国内総生産)の8%を占めるという。この推定に基づけば、アメリカの企業や家庭は、購入済みの機器に年間およそ1兆ドルを支出している計算になる。アメリカのアフター・サービス市場は、各国の経済規模と比較すると、実に世界第9位に位置づけられる。
事実、ペンシルバニア大学ウォートン・スクールとスタンフォード大学の共催で、2004年10月に開催されたサービス・サプライチェーンのフォーラム[注]では、経営者たちが「総売上高の20~50%ほどをサービスが占めている」と述べている。
アフター・サービスは利益率が高く、利益の相当部分がこれによってまかなわれている。AMRリサーチが99年に作成した報告書によると、アフター・サービスは総売上高に占める比率こそ24%にすぎないが、粗利益で見ると、全体の45%を稼ぎ出しているという。