管理者の「マネジメントIQ」を測定せよ

 リーダーにふさわしい人格特性とはいかなるものか。あるいは、どのようなスタイルのリーダーシップが求められるのか。巷には、そのような内容を記したリーダーシップ関連書があふれている。ところが、管理職を採用する際には、リーダーとしてのKFS(成功要因)として最も重要な要素、すなわち「知能」(インテリジェンス)がないがしろにされがちである。

 より具体的に申し上げれば、ある人物を採用すべきか、あるいは昇進させるべきかについて検討するに当たって、ビジネスに不可欠な能力、すなわち「最適な解決策にたどりつくための認知能力」(問題を発見し、理解し、解決する能力)を評価する方法論が存在していないのだ。

 では、そのような知能を、どうすれば識別できるのだろうか。歴史的に見て、知的能力の測定を目的とした信頼性の高い、そして唯一の方法がIQテストである。しかし、あるもっともな理由から、産業界で使用されることはほとんどなかった。すなわち、企業に応用できるタイプのものが存在しないというのだ。

 これだけの理由で、IQテストはビジネスの世界から閉め出されてしまった。その結果、認知能力を測定する効果的な方法を失ってしまったのである。一流の経営者になるべき人材を見抜くうえで、有用かつ唯一の方法だというのに──。

 カリスマ性と自信にあふれたリーダーならば、何の文句もない。履歴書を飾る華々しい経歴は、その人物の知識と経験のほどを物語ってくれよう。だからといって、これらは、私が申し上げている、ビジネスに不可欠な「純然たる知能」に代わるものではない。

 また、物事の本質に迫る能力があるかどうかを明らかにするわけでもない。いかなる組織においても、またいかなるビジネス・リーダーにとっても、最も重要なことはこの批判的思考である。

 そして、この批判的思考という能力はおおむね、彼ら彼女らの知能によって決まる。もちろん、学業の面で優れた成績を残し、IQテストで高いスコアを獲得してまさに天才の領域にあると判定されても、大企業のCEOが務まるわけではない。それもそのはずである。IQテストはもともと、ビジネスではなく学業における成功に必要とされる認知能力に焦点を当てているのだから──。

 ただし、IQテストの高い予測性を無視することはできない。すなわち、ある活動をどれくらい上手に遂行できるかどうかを正確に予測するには、その活動に直接影響を及ぼす認知能力を調べなければならないということだ。この場合の活動とは、座学ではなく、実学である。

 本稿では「マネジメントIQ」(executive intelligence)という概念を提唱し、それに関わる認知能力が何であるかを明らかにしたうえで、採用面接や昇進の決定において着目すべき点を解説する。

「批判的思考」という主成分

 経営学者も実務家も昔から、ビジネス・リーダーには物事を批判的に考える能力が不可欠であることを承知している。