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健全な組織と不健全な組織
企業が健全か、不健全かはすぐわかる。健全な企業の経営陣は、価値ある情報をタイミングよく収集し、それに基づいて意思決定を下す。しかもこの時、企業全体の利益を優先させるようなインセンティブが働く。むろん、決定事項はてきぱきと実行に移される。
このような組織の健全性は、「再起力(レシリエンス)」という言葉で形容できる。この力を備えている企業は何か問題が起こっても、機敏に処理し、やむをえずダメージを被っても、素早く立ち直る。しかし残念ながら、再起力に優れた組織は少ない。
ブーズ・アレン・ハミルトンでは、オンライン上で無料の組織診断サービスを提供しているが、これを受けた世界各国の約3万人のうち、再起力の高い組織(再起力型)に所属していたのは、2割にも満たなかった[注1]。
一方、全体の4分の1以上に及び、最も比率が高かったのは、我々が「受動攻撃型」と呼ぶ組織に属する人たちである。このタイプの組織には特有の症状が見られる。我々が受動攻撃型という言葉を使うのは、この組織には一見穏やかだが、あらゆる手を使って公然と組織の方針に断固反対する面従腹背の勢力がいるからである。
受動攻撃性のある社員は、うわべは会社の方針に従っているが、実のところ、つき合い程度の努力しかしない。そして、好きなように行動する。なぜなら、それによって罰されることもないからである。もっともこのような企業の場合、方針そのものが間違っていることが多いため、社員だけを責められない。
事態を悪化させているのは、経営陣が責任の所在を明らかにしないことである。そのため管理者たちは、何をしても責任を問われず、また何か計画しても、承認を得るのに延々と待たされ、やっと承認を得ても、あれこれと横槍が入る。こうした組織では当然、達成感は得られない(図1「組織の7タイプ」を参照)。
図1 組織の7タイプ
我々の調査によると、組織は7つに類型化できる。そのなかで最も健全なのは、再起力を備えた組織(再起力型)である。再起力に優れているとは、変化に柔軟に適応できることにほかならない。ところが現実には、不健全きわまりない「受動攻撃型」の組織が最も多い。このタイプの組織では、権限の範囲があいまいで、功労が報われることもなく、社員はたち、笑顔のつくり方と相づちの打ち方、そして要領だけを学ぶ。
大半の社員たちが、学習し、共有し、達成したいという健全な欲求の持ち主である。この欲求を妨げるようでは、かえって組織に害をなす行動が身についてしまう。もしかすると、何事にも無気力になったり、当初は行動的だった社員も挑戦しなくなったりするかもしれない。
この受動攻撃型組織では、表立った対立は見られないが、非協力的な態度が蔓延している。一般的に言って、このように不健全な企業は、経営トップの支配力が強すぎるか、弱すぎるか、いずれかの問題を抱えている。どちらにしても業績悪化の原因であることは間違いない。
支配力が強すぎると、権限委譲や情報共有が進まず、建設的な意思決定が正当に評価されない。反対に支配力が弱すぎると、社員一人ひとり、個々の事業部の行動が矛盾したり、あるいは沈黙を決め込んだりする。また、その特異な発展の歴史ゆえに、支配力の過剰と過少の両方の欠点を持ち合わせてしまう場合もある。