時間、社員数、財務面の障害を把握する

「物事は変化すればするほど不変となる」("Plus ca change, plus c'est la meme chose.")。これは、フランスの作家、ジャン=バチスト・アルフォンス・カールが残した言葉である。これは、あたかも変革マネジメントに警鐘を鳴らしているかのようだ。

 企業変革の難しさを知る研究者や経営者、コンサルタントが、この課題に取り組み始めて30年以上が過ぎた。その間、たとえば、変革のビジョンを掲げ、これを実践する経営者を称賛する、企業風土の改革と社員の意識改革を重視する、トップ・ダウン型の変革プロジェクトと草の根型の変革手法の間に生じるギャップを埋めるといったことがなされてきた。

 挙げ句の果てに提唱されたのが、社員の感情と理性に訴える社内キャンペーンである。にもかかわらず、「変革プロジェクトの3分の2は失敗する」という状況がいまなお続いている。やはり「物事は変化すればするほど不変」なのだ。

 言うまでもなく、企業変革は一筋縄ではない。その問題の一端は、変革プロジェクトを大きく左右する要因を絞り込もうにも、社内の意見が食い違っていることだ。また、名経営者たちに変革プロジェクトの成功要因について尋ねてみても、おそらくその答えは十人十色であろう。なぜなら、視点や経験は一人ひとり異なるため、したがって成功要因も違ってくるからだ。

 専門家たちの見方もまた、千差万別である。2005年8月時点で、企業変革に関する書籍をアマゾン・ドットコムで検索したところ、6153点がヒットした。ところが、これらの中身もまったくてんでばらばらだった。

 いずれも何らかの参考になるだろうが、すべてを真に受けると、さまざまな課題に同時に取り組まなければならず、経営資源やスキルが分散してしまう。ひいては、組織の随所で無手勝流の改革が進んでいくはめになろう。企業変革に混乱はつきものとはいえ、これでは社内の収拾がつかなくなる。

 近年、企業変革に一家言ある人たちは、企業文化、リーダーシップ、社員のモチベーションなど、ソフト面に目を向けている。たしかにこれらもKFSといえるが、企業変革をみごと成功させるには、ソフト面のマネジメントだけでは不十分である。

 また、これらのソフト要因は、必ずしも変革プロジェクトの成否に直接影響を及ぼすとは限らない。たとえば、洞察力あふれるリーダーシップが不可欠であることは間違いないが、やはり例外もある。社員とのコミュニケーションも同様である。

 しかもマインド・セットや人間関係といったものは、組織や人間に深く根差しているため、そう簡単に変えることはできない。また、企業文化やモチベーションの変化は観察やインタビューによって間接的に評価できるが、信頼に足るデータを得ることは難しい。

 むしろ我々は、企業変革において、比較的地味なハード面がなおざりにされていると見ている。ハード要因には、次の3つの特徴がある。