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お客様が王様か
上司が王様か
営業担当者のだれもが「お客様は王様である」と言うだろう。それが本音ならば、まことに結構な話である。さらに問い詰めれば、「上司が王様である」と言う者もいるかもしれない。これもけっして悪い話ではない。
問題なのは、営業担当者が「自分のボスがだれなのか」、きちんと把握できていない場合である。このような混乱は、営業チームの管理方法を定義するさまざまな方針と施策、すなわち営業部門の管理システムに矛盾が生じている兆候かもしれない。
我々は、営業と営業部門について20年間にわたって研究してきた。その経験から申し上げれば、このような矛盾はまず間違いなく、営業活動に支障を来す。営業担当者がシステム内の矛盾を解消し、問題に対処しようと苦戦するうちに、事態は進行していく。最初は個人の問題だったものが、営業チーム全体に広がり、最終的には組織全体を苦しめるようになる。
やがて、営業チームから優秀な人材が離れていき、離職率が急上昇する。我々が調査した、ヨーロッパの某多国籍企業では、5年連続で国内営業担当者の半数が職場を去っていった。さりとて苦境に立たされているわけではない。しかし、未解決の問題は山積していた。
世界38カ国、50社で働く営業担当者2500人以上を対象に統計調査を実施したところ、営業担当者に顧客第一主義を奨励する管理システムと、地域統括責任者を最優先させる管理システムの間には大きな相違が認められた。しかも、それが問題視されていないケースが実に多いこともわかった。
本稿ではまず、営業部門の管理システムに存在している対立がもたらす影響について解説する。そして各社の企業戦略や競争環境、組織能力、将来への展望にふさわしい管理システムを見分ける方法について説明してみたい。
2つの文化:成果管理システムと行動管理システム
どんな営業部門でも、その文化と有効性は管理システムの産物である。つまり、営業研修、日々の活動のモニタリングや監督、動機づけ、査定を管理する制度やルールによって生み出されたものだ。
このような管理システムがあるからこそ、営業マネジャーは営業チームに向けてメッセージをほぼ継続的かつ自動的に発信できる。
たとえば、営業担当者の希望と企業組織の現実という相克、すなわち時間も金も十分かけて契約を獲得したいが、限られた経営資源を活用して契約を獲得するしかないという状況にあって、その交換条件として会社側が提示するものを営業担当者たちに伝えることができる。
さらにこの管理システムは、営業担当者が仕事上の課題をどのように理解し、自分の役割についてどのような考えや感想を抱いているか、またどのように仕事に取り組み、どのような業績評価指標に注目するのかといった点にも影響を及ぼす。