中国の関与なくして解決は望めない

 西洋諸国と中国間の緊張が目に見えて高まっている現在の地政学的な環境の中で、東洋と西洋が相互利益を創出し信頼を醸成できそうな協調の領域を見定めるのは難しい。しかし、その一つとして挙げられるのが気候変動対策である。気候変動はあらゆる国に影響を及ぼす問題であり、世界銀行によると、世界全体の排出量の27%を占める中国の関与なくして解決は望めない。

 表面的に見れば、気候変動に関する協力はウィン・ウィンのように思える。中国はカーボンフットプリントの大幅な削減を目指しており、国際組織との連携はこの目標達成のカギとなる。とはいえ、現実は複雑だ。地政学的な緊張と透明性への懸念により、特に新型コロナウイルス感染症のパンデミック後は、中国と緊密に協力するのをためらう企業も少なくない。

 パンデミックは、重要なビジネス関係をも引き裂いた。多くの外国人専門家が中国を離れるなどして、同国と国際ビジネスとの結びつきが弱まってしまったのだ。そのうえ、西洋諸国の政府(特に米国)は現在、長年の政策を覆し、政治的にも経済的にも中国から距離を置く措置を講じている。

 このような緊張は現実的な結果を伴う。たとえば、ビル・ゲイツのテラパワーは先進的な原子力エネルギープロジェクトだが、米国政府の規制により中国案件は中止を余儀なくされた。米国では、非常に多くの中国関連の太陽光発電プロジェクトが政府の審査待ちで保留状態にある。これらは企業が中国取引で直面する外的圧力の高まりを示すほんの一例にすぎない。

 もちろん、中国は他にも欧米企業に対して、資金や事業所有権に関する厳格な規則、複雑なサプライチェーン、踏み込んだデジタルデータ法、成長著しい中国企業との競争、中国企業への法的優遇措置などの障壁を課してきた。実際に、中国市場が期待するほど値千金かどうかに疑問を抱き始めている企業は多い。中国の人口動態の変化と巨額の債務は、かつて華々しかった同国内の経済成長を脅かしている。一部には中国から完全に手を引く企業もある。たとえば、シーメンス・ガメサは現地企業に有利に見える状況に不満を抱き、2021年に中国の陸上風力発電市場から撤退した。

 こうしたハードルにもかかわらず、欧米と中国が気候変動問題で協力する機会は前途有望だ。筆者らは欧米で訓練を受け、中国に深く入り込んでいる専門家として、生産的に関与する可能性を目にしてきた。本稿では、中国における現在の気候変動関連の機会の複雑性をひも解き、市場参入の準備が整っている企業向けに実践的な戦略を提示したい。

二重のチャンス

 気候変動問題で中国を巻き込みたいと思っている欧米のビジネスリーダーに筆者らが最初に説明するのは、二重のチャンスがあるということだ。

 第1に、中国は欧米発ソリューションの広大な市場となりうる。中国政府はこの分野で野心的な目標を掲げており、2030年までに二酸化炭素排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを達成することを目指している。