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優れたリーダーは心地よい環境を飛び出し
みずから学び続ける
編集部(以下色文字):津坂さんは2023年2月、日本マイクロソフトの社長に就任されました。前職のボストン コンサルティング グループ(BCG)時代、マイクロソフト会長兼CEOのサティア・ナデラ氏の話を聞く機会があり、以来、彼のことをリーダーとして最も尊敬しているそうですね。ご自身も世界的なコンサルティングファームのリーダーとして活躍し、またさまざまなリーダーと協働してきた中で、ナデラ氏のどこに特別な魅力を感じたのでしょうか。
津坂(以下略):私がBCGに在籍していた2018年、サティアは世界中のパートナーが集まるカンファレンスに登壇し、私も聴衆の一人として参加していました。
サティアはその場で、自分の成果を誇示することなどなく、マイクロソフトの文化を変えるために社員の気持ちをどのように動かしたかを熱く語ってくれ、なかでも「『何でも知っている』(know it all)から『何でも学ぶ』(learn it all)会社に変える」という哲学には感銘を受けました。その後、日本マイクロソフトから声をかけてもらうことになりましたが、あの時のサティアの話は転職を後押しした動機の一つです。
自分が彼の下で働くようになり、サティア自身が誰よりも「何でも学ぶ」を実践していることには驚いています。あるメディア[注]によると、サティアは毎朝2人の経営者に電話をかけ、「期待しているスタートアップはどこか」と尋ねることが日課になっているそうです。彼の立場なら、現状を保ち続けることもでき、そのほうが心地よく過ごせるはずです。しかし、サティアは自分から外の環境へと飛び出し、学びを得て中に戻り、再び外に飛び出していきます。リーダーが常に学ぶ姿勢でいられるのは素晴らしいことだと思います。
サティアがリーダーとして際立つ点に、対話や議論を大切にすることも挙げられます。私が「右に行きたい」と思った時、「それならば『右に行く』とはっきり伝えよう」と自信を持たせてくれたうえで、「どうすればそこに行けるかを一緒に考えよう」と話し合う機会を設けてくれるのです。意見が異なることもありますが、マイクロソフトの課題を指摘した時ですら、しっかりと耳を傾けてくれます。私が日本の責任者だからそうするわけではなく、彼はどこの国を訪れた時でも現地の社員と交流する時間を設けています。
サティアがマイクロソフトのCEOに就任するというニュースが発表された時、まだ46歳と若かったこともあり、「本当に適任者なのか」と疑問の声も上がったそうです。しかし、彼は世界中で約20万人の社員を率いて、圧倒的なスケールで成果を挙げ続けてきました。テクノロジー業界は浮き沈みが激しく、業績の変動は当然とされる中、マイクロソフトは20年間成長を続けています。
優れた業績の会社には素晴らしいリーダーがいて、よいリーダーにはよい人材がついてくる。サティアの下でマイクロソフトが成長を続けられていることは、それを証明しているのではないでしょうか。