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予期せぬ事態続きだった私のキャリア
人の営みにも潮の干満がある
満ち潮に乗ればすべてが上々
これを逃すと一生みじめな浅瀬から出られない
ウィリアム・シェイクスピア
『ジュリアス・シーザー』の名文句が示すように、シェイクスピアは素晴らしい詩人であり、また劇作家であっただけでなく、ビジネスマンとしても並ならぬ人物であったようだ。浜の真砂の尽きぬように新聞の見出しには、どこかの企業が危機に陥ったというニュースがたえず流れてくる。前触れなどはまずないし、時には経営陣に何の落ち度もないことさえある。
1995年某月某日、『ワシントン・ポスト』に、次のようなニュースが一挙に掲載された。「アメリカン・イーグル航空、前代未聞の連続墜落事故」「フランスのアビオン・ド・トランスポール・レジオナールが製造した機体と連続事故との関連性」「カリフォルニア州オレンジ郡のデリバティブ取引による破産」。そして「インテルの〈ペンティアム〉チップの誤作動問題」。まことに悪い知らせのオンパレードが繰り広げられた一日だった。いや、いつものことだともいえなくない。
もちろん、不測の事態に見舞われるのは、これら航空会社や金融機関、コンピュータ業界だけではない。もちろん、95年も史上最悪と言うには無理がある。歴史を振り返れば、ビジネスを脅かす危機は山ほどあった。
1673年には、オランダでチューリップの球根への投機が過熱し、球根1個に現在の貨幣価値で1000ドル相当の値がつけられたりしたが、このバブルははじけて、投機家や出資者を財政的に破滅させた。
1861年には、ウェスタン・ユニオンによる大陸横断の電信サービスが始まり、できたばかりのポニー・エクスプレス(ポニーを使った郵便事業)が一瞬で意味を失った。
1906年には、サンフランシスコで大地震が起こり、その市街と金融システムが破滅に瀕した。ただしその渦中にあって、A. P. ジアンニーニという男が経営する中小銀行、バンク・オブ・アメリカは融資を続け、世界最大級の銀行に飛躍する糸口をつかんでいる。