役職名から想像される仕事の定義を疑え

編集部(以下色文字):奥山さんは20代から複数のレイヤーでマネジャーを経験し、現在は経営者として辣腕を振るっています。国内外の企業における豊富なビジネス経験を通じて、現代やこれからのマネジャーに求められる仕事のあり方や心構えをどのように捉えていますか。

奥山(以下略):マネジャーの話に入る前に、そもそも「ビジネスとは何か」を考えてみたいと思います。英語の「business」の語源は古代英語の「bisignes」です。私は大学で言語学を専攻していたこともあって、言語や物事の根源をたどる癖があるのですが、この語源の定義は単に「busy」(忙しい)だけでなく「anxious」(不安)や「careful」(気を配る)なども含むナイーブなものです。つまり、ビジネスとは「不安はあるけれど、常に気を配りながら忙しく従事する」ことであり、それは大前提として「数字だけで割りきれないもの」といえます。

 ただし同時に、事実としてビジネスには「目的」と「結果」があります。目的は、「顧客をつくり、ともに育み合っていくこと」であり、結果として「売上げと利益の成長」がついてきます。ここで注意したいのは、売上げや利益は目標であって目的ではない、ということ。同時に、目的だけが明確で、売上げや利益といった目標がない企業もうまくいきません。

 この「目的」と「目標」を混同しないことは、非常に重要です。日本語の漢字が少し紛らわしいのですが、目的(purpose)は「なぜ存在するのか」という存在理由であり、数字で測る必要はありません。一方、目標(objective)は「限られた時間内で達成すべきもの」ですから、測定可能であるべきです。この両者を常に行ったり来たりする思考が大切で、目的のない目標志向だけでも、目標のない目的志向だけでも、事業や「人財」を破壊してしまい、うまくいかないのです。

 ここからが本題ですが、ビジネスにおいてはこの「目的」と「結果」をつなぐことが不可欠であり、そのために最も大切な能力は、中身のある「オーセンティックリーダーシップ」だと私は考えています。

「マネジャー」や「リーダー」というのはあくまで役職名にすぎず、本当に大切なのは、その役職にかかわらず求められるリーダーシップという能力であり、そこに注目すべきではないでしょうか。

 マネジャーにはリーダーシップという能力こそが重要であるという点は、昔もいまもこれからも、また業種や国の違いがあっても普遍的でしょうか。

 そうです。海外の企業であろうと日本の企業であろうと、消費財業界やテクノロジー業界といった業種の違いがあろうと、求められるリーダーシップの本質はユニバーサルです。そして、これからも変わらないでしょう。