クール・ハンターズ

 我々は目下、「ポストモダン時代に生きている」とよく言われる。

 ポストモダン時代には、高尚な文化と大衆文化、リアルとハイパーリアル、生産と消費とを分かつ確固とした境界等、かつてあると信じられていたものが消え失せる。

 同様に、進歩の概念、世界の意味を汲み取るメタ物語(普遍的な文脈)、首尾一貫した理想などすべて、束の間のスペクタクルのごとく次から次へと我々を魅了する「ポストモダン消費」のなかで雲散霧消していく。

 このポストモダン・ビジョンの一端は、マウスをクリックしてネット・サーフィンしたり、最新のミュージック・ビデオを観たり、最新のバズ(話題や流行)を追っ駆けたりすれば、容易に垣間見れるはずだ。

 だとすれば、ますます多くの定量的データに直面している我々が、物事の意味を理解しようとして定性的および解釈的な調査に頼るのは自然なことである。次の流行に取って代わられて消えてしまわないうちに、「バズ」をキャッチし、それに乗じるために──。

 この目標達成に向けて、1990年代に登場した定性的調査者の一つのカテゴリーが、最新のトレンドを出現と同時に発見することに努める「クール・ハンターズ」である。

 北アメリカとヨーロッパでは、大概のトレンドはスラム街や乱痴気パーティ、街頭で生まれるものだ。クール・ハンターズはこのような場所で観察を行う。アメリカではトレンドの先導者は黒人ラッパーだが、90年代中頃の日本では女子高生がその役を務めていたようで、「女子高生」は一つのブランドになったと聞く。

 伝統的なマーケティング調査は、この種のトレンドを検出・理解するのがとりわけ不得手である。

 このようなトレンドは、クール(かっこいい)かそうではないかという、かなり単純な基準に沿って判断され、その結果、人気の頂点ばかりを追いかけることになる。

 また、ある事柄が瞬く間に、一つのカテゴリーから別のカテゴリーに移ってしまうこともある。