B2B市場を再定義する新しいプレーヤー

 B2B(Business to Business:企業間)取引にインターネットを活用すれば、コストの大幅削減、取引機会の増加、市場の流動化、そして効率的で柔軟性の高い商取引手段の誕生など、市場参加者に多くの利益をもたらすことになる。しかし、そのメリットは明らかであっても、それを享受できるまでの道のりが平坦だとは限らない。

 B2Beコマース市場(エクスチェンジ)はまだ揺籃期にあり、その構造もプレーヤーも絶えず変化している。マスコミがこぞって取り上げるテーマにもかかわらず、B2Bがネット上でどのように進化していくかについては、いまだにほとんどわかっていない。

 経営者の多くはこの不確実性の高さに不安を感じているわけだが、それも無理はない。売り手、買い手を問わず、あらゆる企業がB2B市場の可能性に魅力を感じている一方で、新たな企業間関係や取引形態の登場によってサプライチェーンから商品開発やマーケティング、ビジネスプロセスとオペレーション、そしてビジネスモデルまでもが変わっていかざるをえないからだ。

 にもかかわらず、どのB2Beコマース市場に参加すべきか、競合他社と何らかの協同組合を設立すべきか、はたまたオンライン・サプライヤーの起用を奨励すべきか、どのB2Bソフトに投資すべきかなど、ごく基本的な問題にすら答えを見出せないでいる。

 もっとも経営者も、選択を誤れば致命的な結果を招きかねないことは先刻承知で、ものすごいスピードで変わり続けるインターネットの世界では、スピーディに行動しなければ取り残されてしまうという危機感も持っている。

 ありがたいことに、B2Bの将来像を示す格好のモデルがある。金融サービス業界である。

 情報ベースのビジネス、大規模で流動性の高い取引、そして激しい競争など、金融市場の特徴は、新たに出現したB2Beコマース市場と実によく似ている。

 ただB2Bと異なるのは、金融市場は何世紀もの歴史を持った市場であることだけだ。しかしそれゆえ、B2B市場の今後の発展を考える際、その進化の足跡をたどることで、重要なヒントがもたらされる。

 特に最近の金融業界の再編は、今日のB2Bに関する通説とは異なり、情報重視型の市場では必ずしも交換取引だけが価値を生み出す方法ではないことを示唆している。むしろ、パッケージング、基準やフォーマットの確立、裁定取引、そして情報管理といった分野に注目したスペシャリストたちに価値が集積されていく傾向にある。

 本稿では、この金融サービス業界という“窓”を通して、B2Bの将来像を眺望してみたい。現行の取引形態にはどのような構造的欠陥があるのかを解明し、ベンチャー企業と大企業の両方に影響を及ぼす構造変化を検証し、今後出現すると予想される市場プレーヤーとその役割について説明していくつもりである。