パートナーシップにおける3つの課題

 創業者が率いる企業は、プライベートエクイティの支援を受けることで計り知れない成長を遂げる可能性を秘めている。創業者であるリーダーの多くは、自立性、創造性、自身の事業に対する深い傾倒を特徴とするDNAを持っている。この点において、段階的な成長に適した専門性やパターン認識能力を身につけてきた伝統的なCEOとは明らかな違いがある。

 この魅力的な特性を踏まえて、プライベートエクイティでは、創業者が率いる企業が関わる投資案件にますます力を入れるようになっている。ピッチブックによると、この種の案件の比率は2020年の54%から2023年には62%へと急増し、取引金額(米ドル換算)ベースでも31%から44%に増加している。

 創業者が率いる企業が、新たにオーナーとなるプライベートエクイティとの関与を迫られた時、何が起こるだろうか。多くの場合、特に投資サイクルの重要な転換点で、対立が生じる。こうした企業のトップは起業家であることが多いが、創業者ではないCEOと比べて、彼らははるかに「とがった」性格の持ち主である。つまり強みが際立っている一方で、弱みもまた際立っている。

 創業者は、自社のビジネスを自身のアイデンティティやレガシーの延長として捉える傾向がある。これに対してプライベートエクイティの投資家が重視するのは、事業の拡張性や効率性、ガバナンス、数値化できる価値の創出である。その結果、両者に認識のずれが生じ、成長が停滞して価値を実現できない、という事態になりかねない。

 しかし、創業者とプライベートエクイティのパートナーシップをうまく利用できれば、並外れた成果を挙げることも可能である。創業者が深く関与する企業は、プライベートエクイティが出資する環境において、非創業者が率いる企業を上回るパフォーマンスを実現し、より早く大きな価値を創出できる可能性がある。

 実際、ベイン・アンド・カンパニーの調査によると、創業者が深く関与する企業は、非創業者が率いる企業と比べて、15年間で3倍のパフォーマンスを挙げている。しかし、投資サイクルを通じてこのレベルのパフォーマンスを実現することは容易ではない。出資期間全体で、両者の関係をめぐって生じる課題にうまく対処する必要がある。

 筆者らは専門家として、創業者と投資家のパートナーシップを最適化する方法をアドバイスすることに多くの時間を割いている。本稿では、プライベートエクイティの出資を受けた創業者/非創業者の数十件のインタビューおよびアセスメントを分析した数千件のデータポイントに基づいて、創業者と投資家の関係における最も一般的かつ重大な3つの課題、すなわち「文化的な対立」「主導権をめぐる力学」「長期的な一致」について探究する。実例を用いながら、創業者と投資家が協力関係を育み、共通目標を掲げて適応し、桁外れの価値を引き出すための実践的な知見を提供する。

[1]文化的な対立

 投資家がビジネスを成長させるために変革を実行したいと考え、創業者がそれを自社の文化や歴史、あるいはコアバリューを損なうものだと捉えた場合、両者の間に軋轢(あつれき)が生じることがある。このような対立を放置すると、パートナーシップに亀裂が生じ、価値創出を妨げる可能性がある。

 例として、取引をまとめようとしていた、ある創業者とプライベートエクイティ投資家のケースを見てみよう。25年をかけて事業を築き上げてきた創業者は意思決定を行う際、妻や兄、大学時代のルームメートなど、信頼できる内輪の仲間の意見に頼っていた。

 創業者と仲間たちの間では、買い手候補との交渉が始まるずっと前から、取引がまとまり次第、CFOを務める兄が退任することを決めていた。しかし、交渉の過程でこの計画を知らされた投資家は、クロージング後も6カ月は兄が会社に留まり、引き継ぎを監督することが重要だと考えた。