最初にして最も重要な意思決定

 起業家が最初に行わなければならない最も重要な意思決定の一つは、自分一人で起業するか、共同創業者を迎えるかである。投資家の多くは、複数の創業者によるスタートアップを好む。チームであれば、多様なスキルや責任の分担、バーンアウトの回避により、事業リスクが軽減されると考えるからだ。

 しかし、共同創業者間の人間関係を無理につくろうとすると、逆効果になりかねない。イェシーバー大学サイ・シムズ・スクール・オブ・ビジネスの学長で起業研究を専門とするノーム・ワッサーマンらの研究では、高い潜在能力を持つスタートアップが失敗する主な原因の一つは、創業者チーム内の対立であることが明らかになっている。

 筆者は30年にわたりスタートアップを次々と成功させ、起業家精神あふれるベンチャーへの投資も行ってきた。その過程で、共同創業チームが成功する様や破綻する様を目の当たりにしてきた。数百人の起業家を支援し、あるいは起業家とともに働いた経験を持ち、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)で起業について教えているほか、100を超える創業者チームを調査した経験を有する。

 筆者の研究と経験から明らかになったのは、極めて相性のよい共同創業チームは魔法のような成果を挙げる一方、結婚と同じで、軽率にチームを組むべきではないということだ。本稿では、起業家が共同創業者を必要とするか否か、必要とする場合には、適切な人物をどのように探せばよいかを判断するのに役立つ助言を提供したい。

自分は共同創業者を必要としているか

 パートナー探しを始める前に、まず自分がそもそも共同創業者を必要としているかどうかを評価することが重要である。共同創業チームと成功との相関関係については、相反するデータが存在する。

 たとえば、ベンチャーキャピタリストのアリ・タマセブは著書『スーパーファウンダーズ 優れた起業家の条件[注1]』の中で、ユニコーン企業5社のうち単独創業者のスタートアップは1社にすぎないという研究結果を示している。一方で、ペンシルバニア大学ウォートンスクールの研究[注2]では、単独創業者によるスタートアップのほうが長く存続し、より高い収益を挙げるということがわかっている。しかし、データを総合的に見ると、共同創業者がいるほうが財務的に成功することが示されている。

 共同創業者を迎えるか否かを決める際には、以下の3つの重要領域において、満たされていないニーズがあるかどうかを評価すべきである。

 パートナーシップ

 筆者が行った調査では創業者の83%が、コラボレーションの相手や創造性あるパートナーを得ることが共同創業者を求める第一の動機だったと回答している。多くの起業家は、ともにブレインストーミングを行い、仕事を分担し、起業という旅路の苦しさを分かち合える相手がいればよいと考えている。これまでそうしたことを重視してきた創業者ならば、パートナーシップから恩恵を受ける可能性は高い。

 共同創業者を持つということは、人間関係に強い覚悟を持って取り組むということであり、自分がどれほど弱さをさらけ出し、対立を乗り越え、妥協できるかを大いに試すことになる。共同創業チームは、プロダクトや採用に関する意思決定から業務手順や資金調達戦略に至るまで、重要な問題にたえず取り組まなければならない。これらの意思決定を共同で行い、意見の相違に対処できることが、健全な共同創業者関係には不可欠である。