循環型経済のイノベーションは、グローバルサウスから生まれる
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サマリー:異常気象の常態化により環境ストレスが企業の存続を脅かす中、循環型経済は廃棄削減と資源の再利用を促進し、レジリエンスと成長をもたらすカギとなる。しかし、現在の企業の取り組みは先進国を中心とした改善に留まっている。真の成長は、これまで投資不足に喘いできたグローバルサウスなどの草の根から生まれる独創的な解決策にある。本稿では、こうした地域発の循環型イノベーションを事業機会に変えるための戦略的視点を紹介する。

循環型経済戦略で企業が見落としているもの

 日本とオーストラリアの猛暑。テキサスと欧州各地を襲った鉄砲水。カリブ海諸国と東南アジア諸国に甚大な損害を与えた大型の嵐。

 これらはもはや珍しい現象ではなくなり、ビジネスの長期的な継続を脅かす環境ストレスが拡大していることを示している。企業が天然資源を管理する方法(つまり商品を生産し、販売し、処分する方法)は、持続不可能な状態にある。しかしこの問題には、循環型経済(サーキュラーエコノミー)という戦略的なチャンスが潜んでいる。

 循環型経済は、企業が廃棄物を最小限に抑え、資源の再利用を最大化し、商品のライフサイクル全体でイノベーションを生み出すことにより、レジリエンスを高める方法を提供する。アクセンチュアの試算によると、循環型経済は2030年までに世界に4.5兆ドルの経済利益をもたらす可能性があるという。ところが、今日の企業における循環型戦略のほとんどは、依然として欧州や東アジア、あるいは北米でのオペレーションで開発された商品や包装、オペレーションの段階的改善が中心となっている。

 企業が見落とし、自社や社会の利益のために適応や採用ができずにいるものは何か。それは、グローバルサウス(およびグローバルノース)において、これまで資金が回らず、社会から取り残されてきたコミュニティから生まれつつある、極めて強力な循環型イノベーションだ。これらのプロジェクトは、道徳的に優れているだけではない。持続可能なビジネス成長、そしてESG(環境、社会、ガバナンス)を牽引していくための新たなフロンティアでもある。

企業の現状

 現在、ほとんどの企業は循環型経済を3つの方法で実施している。

1. 材料と商品:未使用原料ではなく、再利用またはバイオベースの代替品を使うことにより、再利用、修理、または生分解性(物質が微生物の作用によって最終的に二酸化炭素と水に分解され、自然界へ還る性質)のある商品に再設計する。

2. ビジネスモデル:商品の販売からサービスモデル、リース、共有プラットフォーム、修理ベースのバリューチェーンへの移行。

3. 協働ガバナンス:バリューチェーン全体およびセクターを超えて連携して、クローズドループシステムを構築し、システム的な廃棄物を減らす。

 これらは健全な戦略だ。ただ、それを牽引するのは、社内のR&Dチームや、サプライチェーンのコラボレーション、産学コンソーシアムであることが多い。イノベーションをもっと幅広い視点で捉え、これまで見落とされてきた起業家やインフォーマルネットワーク、そしてローカルな知識システム(経済的な周縁で機能している)を含めれば、よりよい結果が得られるだろう。

草の根循環型イノベーション

 世界中で、資源不足や環境汚染、そして構造的な投資不足に直面しているコミュニティは、環境上の配慮からだけでなく、必要性から「循環」という解決策を構築している。そのモデルは異なるように見えても、企業が直面しているのと同じ課題、すなわち、より少ない資源でより多くのことを成し遂げるにはどうすればよいか、脆弱なサプライチェーンへの依存を縮小するにはどうすればよいか、そして資源に制約のある環境でどうやって業務を継続するか、といった課題に対処している。

 バルバドスの再生可能エネルギーの専門家レジーナ・ヘンリー博士の活動を考えてみよう。バルバドスではガソリン価格が1ガロン当たり15ドルもする(編注:米国では約2.8ドル、日本では4ドル程度)。そこでヘンリーは、ラム・アンド・サルガッサムという会社を立ち上げて、3種類の廃棄物(腐敗したサルガッサム海藻、ラム酒蒸留所から排出された廃棄物、そして羊のふん)を手頃な価格のバイオ燃料に変える事業に取り組んでいる。シンガポールの起業家ベティ・ルーは、コンフェティ・スナックスという会社を立ち上げて、廃棄予定の余剰あるいは販売に適さない青果を使って、健全な利益をもたらすチップスに加工している。ナイジェリアの靴メーカーのサルバタは、河川や海洋で回収したプラスチック廃棄物を再利用してモジュラーシューズを製造したり、炭素除去技術を開発したりしている。

 こうしたプロジェクトは、廃棄資源という環境問題と、エネルギー安全保障や健康な食料と衣服という人間のニーズの両方に対処しており、著しい成長が見込まれている。

 このような途上国の循環型イノベーションに、世界的な大企業が注目し始めていることを示す兆候がある。たとえば、スウェーデン発のファストファッション大手H&Mは、インド南部の都市バンガロールにあるサームヒカ・シャクティのグループに投資している。サームヒカ・シャクティは、デジタルツールや物流プラットフォームを導入して中古衣料品の回収率を高めるとともに、仕分けや回収にあたる労働者の賃金を押し上げている。サームヒカ・シャクティのパートナーであるサーキュラー・アパレル・イノベーション・ファクトリーは、回収した衣料品を使ったリサイクル生地市場を構築している。

ビジネスリーダーへのアドバイス

 イノベーションのポイントが現実の問題を独創的な方法で解決することであり、また、エグゼクティブが持続可能性や企業の社会的責任の目標を達成するプレッシャーにさらされているなら、草の根による循環型経済の構築は本気で検討するに値する戦略だ。

 ただし、すべてのプロジェクトが、すぐに利益を生むわけではないため、投資収益率の測定方法を変更する必要がある。ESGの枠組みや目標に沿った非財務指標を組み込まなければいけない。炭素削減、サプライチェーンのリスク削減、評判の向上、インクルーシブ雇用といった指標だ。

 新たな市場セグメントを開拓したり、規制や環境や社会のショックに左右されないビジネスを構築したりする利点も検討すべきだ。そこで、こうした機会をとらえる4つの方法を紹介しよう。

1. イノベーションの範囲を広げる

 ラボやアクセラレーターの枠にとらわれず考えてみる。新興国や開発から取り残された地域の資源問題に取り組む地域団体や開発銀行、あるいは地元の起業家と手を組むのも一つだ。スウェーデンの家具大手イケアの社会事業であるIKEAソーシャルアントルプレナーシップは、社会起業家支援団体のアショカや、国連開発計画アクセラレーターラボと協力して、成長著しい循環事業を展開するインフォーマル経済アクターを支援しつつ、自社の循環型経済実現に役立つインサイトを得ている。

2. 廃棄物の流れをチャンスとして捉える

 自社のオペレーションであれ、サプライヤーのオペレーションであれ、価値に変換できる廃棄物や迷惑物質を見つける。モジュール化、低コスト、再生可能性を意識したい。英国のインターナショナル・シナジーズは、欧州、アフリカ、アジアの中・大規模企業が現地企業と提携関係を結び、廃棄物の流れを把握し、再生材料を活用するのを支援している。

3. 共通価値のために投資する

 草の根イノベーターとの協力を、企業の社会的責任(CSR)としてではなく、持続可能な循環型エコシステムを構築する共同投資や合弁事業として進める。ユニリーバ・ナイジェリアは、地元の社会的企業ウィサイクラーズが廃棄物収集業者をフランチャイズ化するのを支援することで、消費後の再生プラスチックの地域サプライチェーンを構築して、プラスチックニュートラルを達成するのを助けた。

4. 指標をアップデートする

 循環型投資の価値を全面的に反映する、ESGに沿った指標を採用する。財務上の利益と、測定可能な環境および社会的な成果を組み合わせたハイブリッドビジネスモデルを探すことだ。たとえば、ユニリーバとウィサイクラーズのパートナーシップは、財務上の投資利益率に加えて、再利用されたプラスチックの量、雇用創出、生活賃金についてKPI(重要業績評価指標)を追跡している。

 今後、世界の人口の伸びの大部分はグローバルサウスで生まれる。そのような中、多国籍企業が各地の問題に、その地域で解決できる方法を構築し、みずからと現地パートナーの両方に利益をもたらすのは賢明なビジネス戦略といえる。こうしたことを実行する組織は、イノベーティブな手法を学び、循環型マネジメントを通じて資源を確保し、伝統的なサプライチェーンを超えたガバナンスケイパビリティを構築するという3つの恩恵を受けるだろう。


"For Circular Economy Innovation, Look to the Global South," HBR.org, December 16, 2025.