LLMは正しく使えば、より創造的なアイデアを生み出せる
Illustration by Samuel Finch
サマリー:大規模言語モデル(LLM)は、可能性を探り前提を問い直すアイデア創出の段階で、重要な役割を担い始めている。アイデア出しやブレインストーミングは、いまや生成AIの代表的な活用領域だ。しかし、重要なのは量ではなく、新しさと実現可能性の両立である。LLMは発想を広げる一方で、似通ったアイデアに収れんするリスクもある。本稿では、創造性を高める条件と具体的な活用手法を整理し、人間とAIが共創するための実践的な枠組みを示していく。

生成AIを活用し、アウトプットの創造性を最大限に高めるには

 生成AIの台頭は、私たちの働き方だけでなく考え方までも変えつつある。筆者らの経験では、多くのリーダーは生成AIの導入において生産性に焦点を当てる。たしかに生成AIは多くのタスクをより容易かつ迅速に遂行できるようにして、効率性の向上とコスト削減をもたらすだろう。しかし筆者らの考えでは、このテクノロジーの最も有望な点は別の部分にある。イノベーションと成長の促進につながる、人間の新たな創造性を引き出すのだ。

 製品デザインからブランド戦略に至るまでさまざまな分野で、大規模言語モデル(LLM)は、アイデア創出(アイディエーション)のフェーズ──可能性を模索して前提を問い直す、混沌とした初期段階──に影響を及ぼしている。たとえば、筆者らの一人(プントーニ)が実施した企業の生成AI導入に関する最近の調査では、2024~25年の間に最も急増したユースケースは「アイデア出しとブレインストーミング」であった(+12%)。1年で9つも順位を上げ、現在では最も一般的なユースケースのトップ5に入る。

 これらのツールは、似通ったアイデアをただ量産しているにすぎないのか、それとも革新的な洞察を引き出すことができるのだろうか。そして企業は、アウトプットの創造性を最大限に高めるために何ができるのだろうか。

 本稿は、アイデア創出に関する数十年分の研究と、生成AIが主導する創造性に関する急増中の文献から得た新たな知見を組み合わせたものである。創造的作業の初期段階、特にアイデア出しにLLMがどう影響を及ぼすのかに焦点を当て、LLMによって独創性が促進または阻害される条件を特定する。そして消費者行動、創造性の科学、人間とAIの協働に関する諸研究を基に、AIの能力を創造性の古典的枠組みに当てはめ、共創においてLLMが果たせる実践的役割を紹介していく。合わせて、生成AIを活用してアイデアの質、多様性、インパクトを向上させる具体的な方法を提示する。

アイデア創出とは何か、その質をどう測るのか

 アイデア創出とは、特定の目標や課題に対して新しいアイデアを生み出すプロセスである。その核心は、独創性と妥当性を兼ね備えた概念を生み出すことにある。最良のアイデアは新しい境地を切り開くと同時に、実用的意義をもたらす。

 独創性とは、そのアイデアが既存のものからどれほどかけ離れているかを指す。アイデアの中には小さなもの、つまり確立された製品や戦略を思慮深く改良するような、漸進的なものもある。一方で大きなもの、つまり革新的なアイデアは、カテゴリー自体に異を唱えたり、予想外の意味を取り入れたりする。

 妥当性とは実現可能性を意味する。そのアイデアは、現実的に消費者のニーズに応えられるのか、あるいは既存の行動様式に適合しうるのか。極めて独創的だが実践してみると機能しえないアイデアもあれば、実現しやすいが斬新さに欠けるアイデアもある。

 アイデア創出はイノベーションのプロセスの出発点となり、このフェーズでは量が質に寄与する。網を広く投げ、多くの可能性を生み出すことが目標となる。体系的なふるい分けと洗練を経て、少数の有望なアイデアのみが残る。アイデア創出のプロセスが優れていれば、最良のアイデアが独創性と妥当性の両面で傑出したものとなる確率が高まる。ただし、AIは個々人がより質の高いアイデアを生み出せるよう後押しできるかもしれない一方で、全員のアイデアを似通ったものにしてしまう可能性もある。