極度に集中したフローの状態に入ったとき、自己意識は欠落し、時間感覚が歪む。深く集中し没頭していれば、時の迷宮に迷い込んだように、時間がとても長く感じたり、あっという間に過ぎ去ってしまうような感じがする。主観的には、時間は恐ろしく伸びたり縮んだりするものなのである。
時は金なり
“Time is money.”
これは時間の尊さを教える有名な格言である。1970~1980年代に放送された『クイズタイムショック』(TV朝日)の出だしのフレーズとして、この言葉を覚えた人もいるだろう。司会の田宮二郎や山口崇に倣っていえば、「現代は時間との戦い」である。
産業革命以来、われわれは労働力を時間単位で切り売りしてきた。だから会社側としては、作業の能率を上げ、無駄な時間をなくし、その結果として労働費用を削減していくことが、経営管理の要諦であった。フレデリック・ウインスロー・テイラーの科学的管理法は、まさにその中心である。作業の標準化やマニュアル化が進めば進むほど、効率が上がると同時に、管理も強くなる。
その一方で、われわれは喜んで時間にお金を払おうとする。時間を節約するために、新幹線や飛行機の直行便を利用するし、翌日配達(超速)の宅配便を使う。そうと思えば、ファストフード店でハンバーガーや丼物を胃袋にかきこむより、手間をかけて調理された逸品をレストランや料亭で味わうスローフードには、高いお金を払う。つまり、時間を節約するためにも、時間を享受するためにも、お金を奮発するものだ。
だから、時間をビジネスとしてとらえ、企業は新たなサービスを次々と生み出していく。時間が貴重なリソースだから、そこからビジネスを生み出そうとする。まさに、タイム・イズ・マネージメントなのだ(Time is money-gement)。